Cafe Ligia-exotica / 純喫茶 船虫

よしなしごとを。読書とか映画とか観劇と港の街の話しとか

いらっしゃいませ。


 え?ああ、今新メニューについて考えていたところなんですよ。


ふっ…、ちょっとした実験をしようかと思いましてね。


人の味覚は視覚にどれほど影響をうけるか…

え、やってみたいんですか?


…では、こちらの梅干しをじっと見つめながらコップの水をぐっと…

 


彼は久しぶり読書感想文を書こうと思い立った。


恩田陸さんの『ユージニア』である。


でもこの本、読んだのかなり前だよね。


文庫落ちしてすぐ買って読んだから、少々時間は空いてるね」


でも、なぜ今?


「読み終わって結局人にあげてしまったんだけど、この間、急に読み返したくなって、思わず買い直してしまって」


あれあれ、とんだ無駄遣いだな。


「本は結構こういった事が多くて。手放してから置いておいたら良かったって後悔してしまう事多し」


恩田作品で現在手元に残してるのは?


「『夜のピクニック』。ハードカバーだったんでちょっと売りづらかったので」


気楽に売れなかったんだな。
で、読み返したくなった、この『ユージニア』は?


「賛否、色々あると思うけど、個人的に恩田作品で一番好きかも知れない」


高評価だね!



ストーリー的なことで言うと、


かつて街を悪夢で覆った、名家の大量毒殺事件。数十年を経て解き明かされてゆく、遺された者たちの思い。いったい誰がなぜ、無差別殺人を?見落とされた「真実」を証言する関係者たちは、果たして真実を語っているのか?
(文庫本裏表紙より抜粋)


「過去の殺人事件を、その関係者などから供述を聞き徐々に犯人像に近づいていく、一種インタビューの集まりのようになっていて、少しずつその当時の人物像が浮かび上がっていくちょっと変わったミステリー」




 珍しくこういう事も書くんだな。お得意の投げっぱなしではなく。あまり書くとネタバレになるのでこの程度かな・・・。



 読んでみてどうだった?


「まず読み始めから季節をものすごく感じる。脳内に夏の蒸し暑さや、夏の花の色やじっとりした海風が文章で体感できる。脳内で読んだ文面の『風景』や『季節』、『匂い』、そんなものがすっと脳内で映像に変換(補完?)され、なんだかしっとりとした質感の邦画を見ているような感じがする」



 恩田作品て、そういう『情景』には凝るよね。

「作品によってはちょっとくどく表現しすぎてるなってのもあるけど、この作品はそれほど情報量は多くないのにしっかり空気を感じる」



 ミステリーだよね?

「まあそうだけど、推理をするような類ではなく・・・でも立派にミステリーだね」



 他には?

「恩田作品て、なんだか投げっぱなしでエンディングむかえるのって多い・・『閉じない』というか・・・それになれないと肩すかしを食らったりするけど、この作品はちゃんと閉じます。じんわりと、ゆっくりと舞台の明かりが落ちていくような・・・いい感じですよ」


 かなり褒めてる感じだね。おすすめなんだね?


「・・・うーん」


あれ?


「ミステリーとかに分類されてるけど、それ目当てで読むと『?』な状態に陥る人がいるかも」


 なるほど。



「映像作品を見るように読んでいただければ」



 難しいことをいうなあ。


なんだか今回はいっぱしの評論家気取りだな!小人殿!!