いらっしゃいませ。
・・・カルキ抜き?
・・・酸素?
・・・ああ、そこのグッピーですか?
まあ細かいこと言わないで蛇口へどうぞ・・・。
彼は本日、『阿佐ヶ谷スパイダース』の公演、『アンチクロックワイズド・ワンダーランド』を観に行った。
(作・演出 長塚圭史)
どうするね、一応感想などを書く気かね?
「・・・うーん、一応書こうかなと・・・その前に・・・」
芝居以外で何か?
「いやあ、シアター・ドラマシティーで客先が半分しか埋まってない状態を初めて経験した!」
・・・なんと!今をときめく長塚圭史氏率いる『阿佐ヶ谷スパイダース』の公演で?しかもドラマシティーで?
「まず、『阿佐ヶ谷スパイダース』の弁護って訳ではないがその理由を書いておきたい」
ふむ。
「本日、2010/02/25の大阪の昼公演は追加公演であったのだ。よく大物の外タレの公演でも最初に販売した公演が満員で、追加公演をしたらやたらと空いていた何てことがあるそうだ。実際に目にしたことはなかったけど、まさにその状態が起こってしまったらしい」
ほう。空いていたんならそこそこ良い席で観られたんじゃないか?
「なんと前から三列目。ドラマシティーで。しかも公演終了後に出演者と演出の長塚圭史氏のアフタートーク付き」
ほう、運が良いな。
「まあ、急に追加公演ですよと言われても、ど平日の真っ昼間にそうそう上手く予定が空く人も少ないしね」
それはそうだな。
「まあ、この客席のガラガラさ加減もありつつで感想文チックなものにいこうかなと」
ふむ。今回は複数人で行ったんだね?
「同行者は、劇団『とり鉄人』主宰、「北摂の宮崎」ことコバタ(ソラニンを観に行くはず)、そして素敵女子音響のMS嬢、さらに風船パフォーマーMT嬢(これも素敵女子)の総勢四人で観に行ってきた」
一応ネタバレしない程度に内容とかも書いておくかね?
「ホラー小説で一世を風靡した作家が、それまでの作風を変えて新作に挑むが、世間にはその新作が受け入れられずに一部批評家や妄信的な読者から酷評をうけてしまう。精神的に追い詰められた小説家は夢とも現実ともつかない一晩を過ごす・・・・」
ほう。まあ、よくあるタイプの物語、かな。で?
「・・・いや、ストーリー的なものはこれ以上無く・・・」
なんと。
「そのまま上映時間の2時間が過ぎてゆく・・・」
えーと、何を聞けば良いんだろう?じゃあ、観終わってどんな感じだ?
「・・先ず観終わった後の会場の雰囲気は全てのお客が『ポッカーン』とした状態だったように思う」
『ポッカーン』?
「いつ芝居が動き出すんだろう、いつ物語が展開するんだろう、誰もがそんな風に考えたまま二時間が終わってしまったって感じ」
うーん、それは平たく言って面白くなかったって事?
「・・・いや、達者な役者さんばかりだったので、緊迫感を持って二時間観続けることは出来たし、『演劇』としてはそんなもんかなと思った・・・。ただ、エンターテインメントをある程度期待して観に行ったので、全く肩をすかされてしまった状態。おそらく会場のほとんどのお客さんがそうだったんじゃないかと」
・・・ふむ。
「あと、客の入りが悪かったので空間の温度も上がりきっていなかったように思う」
一人のお客さんが笑ったり驚いたりするさざ波のような反応が、たくさんのお客さんだったらその波が大きくうねり会場の空気を作る。お客さんが少ないと波もうねらず、温度も上がりづらい。これは実際に芝居の公演を行った事のあるものは実感しているはずだ。
一人ひとりが起こす小さな波が、満員の会場で一斉に起こる。会場はその空気になる。
「とにかく、なんだかもやもやしたままの公演であった」
ふむ・・・。
「個人的には『芸術論的』なものが先行するより、それ以前にエンターテインメントであった上での『芸術性』であったり『メッセージ』であったりだと思うので」
なるほど。平たく言うともう少しお客さんにわかりやすくしろよって事かね?
「うーん、そこまで言うと『エンターテインメント至上主義』みたいでまるっきり馬鹿みたいなんであれだけれどね」
感想とかまとめとかにいくかね?
「恐らく、今回の作品は長塚圭史氏にしてもかなりな挑戦だったんではないかと思うね。アフタートークでは『お客さんにも考えさせる事で芝居に参加できるような作品にしたかった』って言っているし。多分そこまで普通に方はたどり着くような感じではなかったけど。でも、もし次回ちゃんとしたストーリー物を公演するというなら今回の雪辱ではないが是非観てみたいなと思った」
なるほど。
因みに空いていたのはたまたま彼が行った追加公演が世間に浸透していなかっただけで、それ以外の回の公演は全てお客さんがいっぱいであることを『阿佐ヶ谷スパイダース』の名誉のためにもここに明記しておく。
「・・・あと残念だったのはさあ・・・」
急にくだけて、どうした。
「いやあ、せっかく素敵女子を引き連れていったんだから、やっぱり盛り上がってくれないと困るじゃん!」
じゃん?
まあブーたれず付き合ってくれた素敵女子達には感謝せねばな。ちょっと馬鹿な女なら芝居中爆睡したあげくさっさと帰ってしまいかねない内容だったからな・・・
終演後彼らは喫茶店へお茶を飲みに行ったのだが、そこで行われた、彼と劇作家コバタの丁々発止の演劇論の展開のしあいはさながらゴジラ対キングコングの様相をていし、お互いに胸ぐらをつかみデコとデコを付き合わせ、双方の顔面につばを飛ばしあいながら、やがて世界の終末の予言にまで話は発展していくのだが、もしかしたら一部は、もしくは大部分が彼の妄想かもしれない。
その後予定があるというコバタ氏は先にいそいそと去っていったが、彼が素敵女子達を両手に抱えて夜の街に消えていったらしい事はコバタ氏には内緒だ。
「次はこれぞエンターテインメント、世界的に有名な日本人パフォーマーの公演に行く予定」
ほう、それは楽しみだな。しかし収入と支出のバランスを考えていかねば、自分お財布の重さを、いや軽さを自覚せよ、物欲小人!
素敵女子 風船パフォーマー『めり』のブログ