Cafe Ligia-exotica / 純喫茶 船虫

よしなしごとを。読書とか映画とか観劇と港の街の話しとか

読書感想文 『GUNSLINGER GIRL』第11巻 相田裕 を読んだ 

 いらっしゃいませ。


 ああ、ノリタケです。

・・・中身?水ですよ、もちろん。

・・・何を期待されたんですか?



 彼は先日『GUNSLINGER GIRL』なるマンガの第11巻を読了したらしい。

えーと、小説とかではないが、今回はそれについて感想とか書きたいのかね。珍しいな。あまり読まないのにな、マンガ。



「たまにはマンガも良いかなと」


最近の発売ではないね。


「昨年夏くらいに出てたらしいが、借り物を読んだので出版時期はよく分からない。コミックスはそれまで一応全巻読んでいたので今回の11巻も借りてみた」



どんな内容なのかね?


「・・・えー、相田裕氏の作。元は同人作品であったらしいが、現在はちゃんと商業誌に連載されておる。

 舞台は、現代の架空のイタリア。「公益法人社会福祉公社」は表向きは政府主催の身体障害者支援事業だが、実態は、なんらかの事情で半死半生の大けがを負った少女たちの身体を『義体』と呼ばれる機械の身体におきかえ、テロリストの暗殺など政府の非合法活動に従事させている団体である。少女たちはそれまでの記憶を消され、『条件付け』と呼ばれる洗脳によって、人を殺すことに罪の意識をもたず、男性の担当官に絶対的な忠誠と愛着を持つよう仕向けられている(少女と担当官の間に性的関係はない)。

 洗脳の継続と鎮痛等のための薬物は少女たちの寿命を確実に縮め、ときには記憶障害を引き起こす。そのため基本的に成長しないまま死期をむかえ、消耗されていくために新たな義体候補を探していくことになる。物語はその少女達の群像劇である。

 『条件付け』のため、暗殺に対する罪悪感などはなく淡々と仕事をこなしていく。また傷つくことや死を恐れない。コンビを組む男性担当官を守る事に対しては銃口の前に立つことすら彼女らはいとわない。

 少女たちは、あるいは人身売買によって「殺人ビデオ」に出演させられた犠牲者であり、保険金のために親に轢き殺されかけた子供であったりする。それが命を取り留め、つらい記憶は消され、彼女たちの「殺人」によってテロは未然に防がれる。さらに彼女たち『義体』の身体のデータは、障害者のためのよりよい義手・義足の開発に役立てられる・・・。」


今回は朝日新聞に掲載されていた書評を参考にあらすじを構成させていただきました。



「なにぶん連載中の話であるし、意外にしっかり物語のバックボーンが作り込まれておるのであらすじを書きすぎるとネタバレになるし、適当にすると筋がぼやけてしまうしで、新聞の書評の内容をお借りする形になった」



まあ、現在進行中の物語の途中だけで感想を言えというのもおかしな話だが、何かコメントを書いてもらおうか。



「ネタバレであるとかを考えて、少し抽象的な(?)話を・・・」



ふむ。



「個人的に、物語の最初に広げた風呂敷を物語の終わりでちゃんと閉じられないような作りの作品はどうも納得がいかなくて」


・・・?


「ちゃんと物語のラストを想定して書き進めているかいないかという話。広がった物語はエンディングでしっかりと結ばれて一つの話として完結する」




・・・ふむ。



「あえて『閉じない』事を前提にした物は別として・・・。物語の途中に急に新たな設定が加えられたり、急にご都合主義的に登場人物が増えたり。なんだか明らかに当初考えていた物語と違うんじゃねえか?ちゃんとラストのこと考えて書き始めたのか?とか考えてしまう。まあどうしようがちゃんと物語のエンディングにがっかりしなければ良いんだけどね」



ふむ。例えば、どんな作品が『?』だった?



「うーん、タイトル出すとあれなんで書かないけど、某有名漫画家が描いていた脳外科医が自分が助けた少年の犯罪を止めようとヨーロッパを放浪するやつ・・・。最終巻まで読んであれ?って思った。作者は本当にこれを意図して書いたのかとか」


ふむ。



「他には、神を自称する犯罪の天才と探偵が心理戦を行うという話のやつ。あれは物語の進行の最中にルールが説明的にどんどん追加されていく。徐々に縛りを増やしていかないと読者が把握できないというのも分かるが、正直あの書き方ではご都合主義にしか見えなかった。ルールは出来るだけ物語の最初で読者に提示された上でのストーリー進行だと思う。後付けでルールや縛りを付け足していくということは、物語の進行をいくらでも都合良く変えてしまえるということだと思う」



語るねえ・・・。で、そのあたりの話が今回の『GUNSLINGER GIRL』にどう繋がるのかね。



「さて、その辺の話をネタバレに結びつけずにどう説明したら良いやら・・・。まあいいか少々のネタバレは・・。」



と言うわけで、これから第1巻を読み始めるぜという方は気をつけてお読みください。



「最初物語はある一人の義体をヒロイン的に描き、その義体の活躍でストーリーも進行していく」


ふむ。



「次に当たり前ではあるが、それまで脇にいた義体達の物語がオムニバス的に語られはじめ群像物語的に話は続く」


まあ、設定上、ヒロインである義体達は半死半生の状態におとしめられたりした過去を持っているはずなので、サイドストーリーはヒロインの数だけあるわけだしな。



「その後にメインストーリーを語ってエンディングへ走るというのが普通だが、ストーリー的な広がりを求めたのか、第2期の義体を登場させて、さらにサイドストーリーを広げた」



ほほう。追加でごちゃごちゃと登場人物が出てくるのは『?』だと言っていたが?



「なんと、ここからヒロイン格であった義体をどんどん脇役へ回し、さらに義体達を死なせてしまうことで群像劇的な進行へ移行」




なるほど・・・。消耗品であるから補充していく訳か・・。



「そして物語のキーを握る者が、今までヒロイン的に扱われていた義体達ではなく、普通の人間である『担当官』であることに」




普通の人間であるから義体と違い感情も持っているし、引きずっている過去にもとらわれているということだな。



「ここ数巻でついにその形が顕れ、今回の11巻で音を立てて『担当官』の物語が動き出したという感じ。」




ここに来て作者が物語を進め始めたという感じなわけだ。




「進行的には後付けで進んで行っているような感じだが、ヒロイン格まで脇にやり、さらに物語の核をヒロインから奪い、さらに消耗品であるとしてヒロイン達がいつ死んでもおかしくないんだというところまで行き着くと、それは逆に良くやったなと思ってしまう」



当初の悲劇のヒロイン物語から、義体達、担当官、そして敵側であるテロリストまでを含めた群像劇へと脱皮していったわけなんだな・・。物語が固定したという意味ではこの11巻は意義のある物だったわけだ。



「さらに、広げすぎた風呂敷を、なんと継ぎ足し継ぎ足ししていくことで物語がちゃんと閉じるように向かっているように思う。後付けを繰り返すと大概ろくな事にはならないが、恐らく各キャラクターのバックボーンを予めしっかり作っていたのであろう。物語が破綻を来さず新たな方向へ動く事に見事に成功していると思う」



なるほど。



「というわけで、これから読もうと思っている皆様、ヒロインはどんどん扱いが小さくなります。その辺をご理解の上で読んでいる途中で落胆などせず読んでください。新たな進行が待っております」




まあ、色々と書いたが、思考が偏っていないか?常にフラットな気持ちで生きよ、小人よ!