読書感想文 『吾輩はシャーロック・ホームズである』 柳広司 を読んだ
いらっしゃいませ。
硬水は常温だとちょっと飲みにくくないですか?
いや、氷をけちっているわけではなく・・・・。
彼は過日、柳広司氏の『吾輩はシャーロック・ホームズである』を読了したらしい。今回はそれについての感想を書きたいそうだ。キミにとっては3冊目の柳広司作品であるが、どうであったかね。
「・・ちょっと、色々なところが惜しい感じの作品だ・・」
ほう・・。
では、恒例の内容紹介でもしなさいよ。
「1900年代はじめのロンドン。シャーロック・ホームズの死亡が世間で取りざたされていたころ、ドクター・ワトソンの所に二人の老婆が訪れる。何でも下宿人の日本人、「K.ナツメ」が心神喪失状態に陥った後、自分のことを『シャーロック・ホームズ』であると言い出したらしい。
結局、その自称ホームズをしばらく面倒を見ることになってしまったドクター・ワトソンは、当時ヨーロッパで流行していた『降霊会』にそのホームズ(ナツメ)を連れて参加することになる。しかし『降霊会』で霊媒師の女性が突然死亡し警察を呼ぶ羽目になってしまう。検死の結果、女性霊媒師は他殺であると判明。自分のことをホームズだと信じて疑わないナツメは、ドクター・ワトソンを連れ回し独自に捜査を始めてしまった・・・」
空想上の人物であるシャーロック・ホームズの物語の登場人物と、実在の人物「夏目漱石(夏目金之助)」が出会い一緒に行動するというなかなかに興味深い内容であるな。実際に当時夏目漱石は英国に留学しているし。かなりな心神喪失状態であったという話しもあるし。
「設定はかなりファンタジックだと思うよ。上手くすればかなり面白くなりそうな感じ」
この作品ではどうだったかね。
「・・・うーん、ファンタジーにも推理ミステリーにもコメディーにもなりきれていないというか・・」
あら。
「例によって感想の内容にネタバレ要素が含まれてしまうかも知れません。未読の方はお気をつけ下さい」
キミも気をつけて書くのだぞ。
「読み始めてすぐは、ファンタジックな推理物になるのかなという感じで読み進めていた。ナツメがホームズとは違った切り口、“文学的な推理”で事件を解決していくのではと、勝手に期待していたんだ」
ほう。
「・・・でもナツメはずっと心神喪失の“なりきり・ホームズもどき”のまま物語は進行してしまう。当然“もどき”にホームズばりの推理力はあらわれることもなく・・・」
それはそうだ。
「それならば“なりきり・ホームズもどき”のナツメの珍妙な行動を面白くコメディータッチに描くのかと思えば(確かにコミカルではあるのだが)、くすりとさせられるほど面白い表現でもなく・・・。映像化されて役者が思いっきり演じて音楽でも入ればコメディーな映像に仕上がると思うが・・」
ふむ・・。
「何となく笑えないんだよねえ、文章で読んでも・・・。逆にナツメが哀れに見えるというか・・・。書き方の問題だろうけど・・・」
読み手の問題じゃねえのか?
「ファンタジーにもなりきれていない感じで・・・。途中かなり幻想的なシーン(柳氏の作品にはありがち)があるんだけど、その路線でもなく」
ふむ。
「もっとも『?』だったのは、途中に『これはぶっとい伏線か?』という箇所があったのだが、そのシーンは最終的には何の意味も成さなかった部分かな・・・」
それはキミの読み方の問題ではないのかね。
「あと、事前知識として、シャーロック・ホームズのシリーズを読んでおくと若干面白さが増す、かも知れない。ただ、ホームズ物の事前知識よりも、夏目漱石について、特に英国留学時の漱石の伝記的な文章を予め読んでおいた方が良いと思うね・・・。これに関しては読み終わってから調べてみるより感情移入度は高いような気がするな」
キミは読書前に史実を調べたのかね?
「読了後にちらっとネットで調べて・・・。近代文学史とかに殆ど興味がなかったので全く知識ゼロでした・・・」
「・・そうだね。漱石をテーマにした小説が3冊出ているようだし」
まあ、今回キミは漱石にもホームズにも思い入れがない状態であったのでそれほど心に響かなかったようだが・・。
「もしかするとホームズ好きや漱石好きが読むとまた違った感想を持つかも知れません」
柳氏の作品は、今後も読むかね?
「『ジョーカー・ゲーム』ってのが結構話題作っぽいので、文庫落ちしたら読むかも知れません」
歴史物らしいな。しっかり情報を仕込んでから読むのだぞ、物知らずのキミよ!