○っちゃん、みなみを甲子園につれてって・・・
・・・ああ、いらっしゃいませ。
すいません。今日は、言語道断な暇さ加減に思わずマンガなんかを借りてきてしまいましてね・・・。天才投手が新体操をやってる幼なじみと甲子園を目指すっていう話なんですが・・・。
あれですね、展開がじれったくて、この・・。
え?
この弟の方、死んじゃうんですか?
嘘はやめてくださいよ。主人公が死んだら物語が立ちゆかなくなるじゃないですか!
過日彼は、『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』を読了したらしい。今回はこれについての感想などを書いてみたいそうだ。
またまたざっくりと始めるが、読んでみてどうだったかね。
「・・・これは、あらゆるところが惜しい!ちょこちょこいじればかなりなおもしろ小説になっていたのではないかと!」
おお、褒めてるのかね。そもそもこの本は小説なのだね?
「褒めてます。そして小説でした」
では、小説ならば、恒例であるが内容の紹介なんかをしなさいよ。
「まあ、タイトルで『高校野球の女子マネージャ』って書いてあるんでおわかりでしょうが、青春小説です、一応。
高校二年生の川島みなみは、入院のために野球部マネージャーの活動を出来なくなった親友の宮田夕紀のために、野球部のマネージャーとして都立程久保高校の野球部に入部する。マネージャーとは何をするべきものなのかという単純な疑問を解消すべく、書店でマネージャーについての専門書はないかと訊くと、ドラッカーの著作『マネジメント』を勧められる。家に持ち帰り内容を読み始めて経営学の本で野球部について書かれている物ではないとわかりショックを受けるが、何事にも前向きに取り組むみなみは、『組織を運営する』という本の内容を野球部の運営に置き換えて野球部を運営していこうと考えることにした。
そしてみなみが試みる『マネジメント』により、弱小野球部は甲子園を目指すという目標に向かって動いていくこととなる・・・」
・・・おお、ネタバレにならないようにな!
「例によってネタバレ注意です。興味があるという方はお気をつけください」
そもそも、キミはなぜこの本を買ってみようかなという気になったのかね?
「以前から気にはなっていたんだよね・・・。帯に『青春小説』としっかり明記されているにも関わらず、なぜか経済系の書籍の新刊と一緒に並んでいたので。経済系の書籍の中で、異彩を放つヲタ系のイラスト。しかも青春小説・・・。そしたら今度は同じ表紙で『月刊ダイアモンド』が発売されてて、横に平積みで売られてるんだよね・・・。書店での扱いからすると、どうやら売れているみたいだし。で、他の書籍を買うときに一緒に買ってしまったんだけどね。」
珍しいな。文庫以外の本を買うとは。
「これがハードカバーだったら手を出していないと思うね・・・。ソフトカバーの本て、ちょっと敷居が下がってる感じで。」
因みに価格は、1600円+税であったらしい。
「文庫なら2,3冊買えてたね・・・。ソフトカバーの罠にまんまとはまったかな・・?」
まあ、買ってしまった物は仕方なし。
ではキミの言う『惜しい』感じを書いていきなさいよ。
「まず、ストーリーですが、ぶっちゃけ前述したあらすじ的なものですべてです。伏線もひねりもない、ど真ん中ストレートな球を小細工もなく投げ込んできます」
むう。下手するとあらすじを書いただけでネタバレか?
「まあ、そこはそうなんだけどね。その直球な話に、意外に熱くなってしまいました。」
ほう!
「まあ、その直球部分にほんの少しひねりだとか幅だとかを入れるともっと「小説」として面白くなったんではないかと思います」
ふむ。例えば?
「・・・ネタバレしてしまっていたらすみませんが・・、主人公みなみが読む『マネジメント』は、文章の表現が超難解です。本文中に抜粋した箇所が何度も出てきますが、高校二年生のみなみが意外にもその文章の内容を容易に理解してしまいます。かなり偏差値に高い進学校という設定ではありますが、それを差し引いても簡単に理解しすぎではないかと。一応、野球部内に既に『マネジメント』をかなり読み込んでいる同級生が居るということではありますが・・」
ご都合主義過ぎるということかね?
「いや、それをご都合主義的だとすると、それは物語の根幹に関わってしまう部分なので。ただ、もう少しみなみは、その難解な文章の読解に悩まなければ。その悩む部分は読者と共有できる部分であるし。経済学に全く触れたことがなかった読者に対しての説明的な部分が自然に挟まれるのではないかと」
ふむ。難解な文章に対して説明的な部分がもう少しあれば良かったということかな。
「説明というか、理解補助というか」
まあ、キミのようなリスザル並みの知能程度の読者も中にはいるわけだしな。
「説明を入れだすとくどくなるので加減は難しいですけどね」
他にはなにかあるかね。
「本文中でさらっと流されてるエピソードがもったいなくて」
ほう。
「それだけでも結構なページ数になるのではないかというドラマが、さらっと数行で終わっていたり」
それは有っても良いエピソードであると感じたかね。
「物語に彩りと幅を持たせ、本文中では触れられなかったキャラが生きてくる良いエピソードではないかと思ったんですが、本当にさらっと流されてしまいます」
ほう。
「個人的にはこういうページ数とかの関係でさらっと流しちゃいました的手法を『「ゼノギアス」のラストダンジョン直前』手法と呼んでいます」
・・・逆に今の「」に無駄を感じるな。
「みなみは高校二年生の夏休み前に野球部に入り、一年をかけて甲子園を目指す。一年の間にドラマやイベントは目白押しなんだけど、いかんせん単行本一冊のページ数は限られすぎていて・・」
ふむ。
「しかも何だかフォントもでかくて一ページの文字数が変に少ないような感じで」
まあ、経済書を読まない人に向けて『マネジメント』を紹介するための小説だからな・・。
「・・少ないページ数という制限が小説を縛ってしまったような気がする。例えば上中下の三巻にして、三巻同時発売とかにしたらもっと物語に幅を持たせることが出来るし、ドラッカー氏の難解な文章に対するフォローも出来たのではないかと思うね・・」
なるほど。
「まあ、この本の作者さんがはじめて書いた小説ということで、まだまだ伸び白はあるのではないかと」
作家さんなのかね。
「元は放送作家さんらしい。現在は企業のマネージャーだとか。本著にプロフィールも載っているので、気になる方は購入して確認してみてください」
結構楽しく読めたようだね。
「さらっと読めるので、通勤電車の中で軽く読める本はないかななんて人には良いかもですな」
キミはもっと難しい本を読むべきではないのかね、リスザル君。人並みの知識を持て!小人よ!