いらっしゃいませ。
では、こちらの大きめのカップでどうぞ。
・・・蛇口はこちらです。
彼は過日、劇団いちびり一家の公演を観劇してきたらしい。
劇団いちびり一家結成10周年記念 第14回公演
『どこかで亀が鳴いている』
作・演出 阪上洋光
於 ウイングフィールド(大阪市中央区)
こちらの劇団さんの芝居を鑑賞したのは?
「はじめてだね。今回の客演で出ていたAI嬢よりのお誘いで行ってきた」
どんな感じの舞台であったかね。
「小編成の生バンド(編成が小さいのは小屋が狭いというのもあろう)、それに歌って踊ってという芝居であるが、陽気なミュージカルというわけではない」
ふむ。
「直球に受け取って良いのか、変化球に受け取って良いのか、なかなか悩ましい芝居でありました」
ほう。ではどんな内容の芝居であったかね。
「雨が降ると決まって15年前の震災の記憶がよみがえってしまう男、まこと。アパート浦島荘に恋人と暮らす。一方、いずれかの混乱のさなかに生き別れたのか、妹・ヨダカを助けようともがく女、雨音(あまね)。
15年前の肉親の死にとらわれた男と、妹の聞こえぬ声を聞き続ける女。二人の接点は果たして・・・」
むう。良くわからないまとめ方をしてきたな。
「自分でも芝居の細部まで理解してきたとはとうてい言い難い状況でありまして」
ほう、難解であったのかね。
「少々。というよりストーリーが動くのがかなり遅く、理解能力の遅さも手伝って消化し切れていなかったような感じ」
要するにキミのリスザル的脳みその処理能力では追いつかなかったと。
「・・・まあ、この手の芝居は完全に理解するとかしないとかってのは別にどうでも言い訳ですよ」
・・・そんなことはないが・・・。
感想とかあるかね。
「肉親の死であるとか、過去を引きずるであるとか、語られている内容は極めて重たいが、それをガシガシに重たいものにせず、歌と踊りで軽やかに交わしていく。男は(女も)最後まで過去にとらわれ続けるが、ラストにはほんの少しの救いを彼らに与えてたんだろうなと思われる」
感想に歯切れがないな。
「飲み込み切れていないもので」
他には何かあるかね。
「皆さん、歌が上手いです。ソロをとっていたヨダカ役の女優さん、特に良い声でした」
ほう。
「・・・個人的に、小劇場特有の肩と肩が触れあうようなキツキツの空間が得意ではなくてですね」
ふむ。
「すぐからだが痺れてきたりして、なかなか芝居に集中出来なくなってしまうのですよ・・」
ああ、そう。
キミの体のトピックは良いから、他には何かないのかね。
「舞台監督が旧知のななこ嬢であったので、何気に行った所で知り合いに会うのはちょっとうれしいですな」
・・・まあ、今回のような芝居もすっと理解できるくらいの知能になれ、リスザル的脳みそのキミよ!