Cafe Ligia-exotica / 純喫茶 船虫

よしなしごとを。読書とか映画とか観劇と港の街の話しとか

読書感想文 『ソロモンの犬』 道尾秀介 を読んだ

 いらっしゃいませ。

 もはや季節が分からなくなってきましたが、暑ければ汗が出る。水が上手い。まあ、この辺の所は変わりないと思うので、のどが渇けばこちらでお水をどうぞ!




彼は過日、道尾秀介氏の『ソロモンの犬』を読了したらしい。今回はそれについて感想なんかを書いてみたいそうだ。氏の小説と言えば、『向日葵の咲かない夏』とか『シャドウ』とか、ちょっと脳内の嫌な部分を探られるようなサイコチックなものが特徴のようだが。









「この作品はそれほど痛いサイコものではありませんね。しかしながら単純に推理ミステリーであるという感じでもないです」




ほう。

では恒例となった内容の紹介でも始めるかね。





「物語のスタートは、主人公とそれを取り巻く友人三人が集まり、恩師である大学の助教授の一人息子が死んでしまったことについて話し合うところから始まる・・・。

 秋内、京也、ひろ子、智佳の大学生4人は、平凡な夏のある日、恩師である大学の助教授・椎崎鏡子の一人息子、陽介が事故死してしまった現場に事故の瞬間居合わせてしまう。陽介は恩師の息子としてだけでなく、4人ともに仲の良い小さな友人であった。陽介はトラックに轢かれて死亡してしまうが、事故の原因は陽介の愛犬『オービー』が突然走り出したために車道に引っ張り出されて起こった事故であった。

 だが、現場での友人の不可解な言動や行動に疑問を感じた秋内は、事故の原因に不可解なものがあると思い、動物生態学に詳しい間宮助教授に相談に行く。果たしてオービーが現場でとった突然の暴走という行動は事故だったのか、それとも人為的に起こされたものなのか・・・。もし人為的に起こされたものだとしたら、陽介は殺されてしまったのか?それとも回避できない事故だったのか・・・」





おお、何だかちゃんとまとめてきたな。





「内容的には情報量少なめです」




えー、すでに結構な感じで内容に触れている気がしないでもないが、例によってネタバレしていたりしてもご勘弁ということで・・・。


読んでみて、どうだったかね。





「まず、何だかまどろっこしい感じがしましたね、文章的に。特に中盤までが変にまどろっこしい」




ほう。




「主人公達が、事故のあった日を述懐しながら『犯人捜し』を行うのだが(中盤まで)、過去と現在のザッピングの感じが物語がぶった切られているようでどうも読書のスピードをそがれる感じがする」





ふむ。





「あと、『容疑者』である大学生達の性格設定がまたまだろっこしい。読者に対して、いろいろなところに疑惑の目を向けさせなければならないので、いちいちその性格や行動をなぞっていくのだがそれもまたまどろっこしい。行動自体に伏線臭い行動があるのでそれを披露していかなければならないのは分かるが、いちいちテンポが落ちる」





ほほう。





「まあ、回りくどい表現自体は氏の小説の特徴と言えば特徴なんだろうけど」






『背の眼』とかも、文章はソリッドな感じではなかったね、そういえば・・・。






「・・・今回のタイトルである『ソロモンの犬』であるが、古代の伝説でソロモン王は魔法の指輪を用いて動物と話をすることが出来た、というものから来ている。ポイントは動物の行動の特徴、今回の物語では特に犬の行動がポイントになってくる」





ふむ。






「でも、個人的な話ではあるが犬好きとしては今回出てきた犬の行動は、かなり常識的な感じで、それほどミステリーの『種』にするようなものでは無かったと思う」






ほほう。





「その辺の犬の飼い方系の本や雑誌の愛読者なら、『常識だけど、なにか?』とか言ってしまうかも知れない」





ふむ。






「まあ、それ以外の所でも青春もの臭い伏線があって、そのフォローとかもあるんだけどね・・・」






氏の作品は、サイコものにしろミステリーにしろ、どこかいびつなストーリーだったりするのだが。





「今回は至極まっとうな落ちでした。全く救いのないラストであったりとか、登場人物のほとんどが身体に・・・とかではないです」






なるほど。






「個人的には氏の小説では『片目の猿』が良かったですね。ちゃんとエンターテインメントしていたし、ラストには『救い』があったし」






『向日葵の咲かない夏』には救いすらなかったような感じだしな・・・。





「まあ、今回、文章とか構成はかったるいですが、それも伏線のためだと思えば我慢できる範囲かも知れないですな・・・」






どうかね、この本はおすすめできる本かね。





「氏の小説にしては、ごくごくまっとうな部類だと思うので、読後にどん底感を味わうこともないので、軽い読み物をお探しの方には良いかもしれません。少々かったるいですが、まあ、許容範囲でしょう・・・。どうしようもない読後感を求めるなら『向日葵の咲かない夏』を、何となく伊坂幸太郎チック(ああ、個人的意見ですよ)なものを求める方は『片目の猿』を。『向日葵の咲かない夏』よりも、ちょっと救いのあるエンディングを求める方は『シャドウ』をどうぞ。まあ、氏の小説は全体的に文章がまどろっこしいですが、あさのあつこ氏に比べたら200倍マシです。そんな感じ」





今回は若干評価が低めな感じだな。






「まあ、でも悪い本ではないので、暇つぶしには良いかと」





これからもよさげな本があったら紹介するようにせよ。


少々文章がまとまっていない気がするが、そのままで今回は終わる。