いらっしゃいませ。
・・・水をこうしてみぞれ状にして・・。
お、見た目もキレイですね。涼しげです。
・・・意外に飲みにくいですね・・・。・・あ、もう溶けてきた・・・。
彼は過日、湊かなえ氏の小説、『告白』を読了したらしい。単行本発売当時、かなり話題になった本だな。
「第6回本屋大賞受賞作品だからね」
で、今回文庫落ちしたので購入してみたわけだな。
「文庫も売れているのではないでしょうか。2010/06/05から、映画版が公開されるということで、映画の告知CMがかなり流れておるので、原作をチェックしてみようという方が多いのではないでしょうか」
キミも映画前に原作チェックかね。
「映画のためというより、単行本が本屋大賞とったときに読んでみたいなと思っていたので。出来るだけ本は文庫化されてから読むようにしているので」
なるほど。
では、例によって内容なんかを書いてみるかね。
「ジャンル的にはサスペンス・ミステリーということになるのでしょうか・・・。正直内容を紹介するのは難しい。ちょっとでも内容に触れると面白さが半減してしまうので・・・。出来るだけネタバレにならない程度で・・・。
中学校の1年生のクラス担任をしている森口悠子は、三学期の終業式が終わった後のホームルームで、今日で教師を辞職するということをクラス全員の前で告げる。
彼女はシングルマザーであったが、学校へ一人娘を連れてきた際、プールに誤って転落、死んでしまうという痛ましい事故に見舞われている。
森口はホームルームで『娘はこのクラスの生徒二人によって殺されたのだ』という告白をはじめる。娘の死は“事故”ではなく“殺人”であると・・・。
この告白から、『犯人』、森口、そして周りの生徒達の物語が動き出す・・・」
む。微妙な終わり方。
「難しいですね・・・。正直物語の情報量は少ないので、これ以上内容に触れると、もう・・・」
ふむ・・。
なかなか難しいようだが出来るだけネタバレせぬように頑張りたまえ。それでもネタバレせぬという保証は出来ないので、未読の方、映画公開を心待ちにしておられる方は気をつけて読んで頂きたい・・・。
「ストーリー的なものは実の所極めてシンプル。殺人を告発する中学教師(母)、『犯人』、そして犯人と近しい人物達の、それぞれの事件に対するモノローグ、そして事件後の出来事についてのモノローグで全編が構成されている」
ほう。
「ある意味極めて分かりやすいストーリーなのだが、それぞれの目線から改めて語られる物語は、一つ一つがものすごく新鮮に映る」
ふむ。
「今回はかなり速いペースで読み終わったんだが、なんだか続けて読まなければならない、という不思議な感覚にとらわれる。キリの悪いところで止めにくいというか・・・」
購入自体は結構前だな。
「文庫化されてすぐくらいには購入していたんですけどね・・・。読むべき本が他にもあったので、かなりな期間、積ん読状態でしたね・・」
情報量が少ないということだが、それは内容が薄いということかね。
「内容は、極めて濃いです。ストーリーがソリッドである分だけ、逆に登場人物達の『告白』が浮き彫りになってきます」
ほう。
「短めなストーリーの中に、親子愛、中学生の恋愛、いじめ、思春期の孤独感・・・色々なテーマが濃厚に詰め込まれていて、それがきっちりサスペンスしている」
ふむ。
「ただ、内容はかなり怖いはずなんですが、不思議とエンディングまで淡々と読めましたね・・・」
やたらとえげつない小説ばかり読みすぎて、感覚が麻痺しているんじゃないのか。
「・・・まあ、否定はしませんが、それよりも極めて平易にまとめられた文章がなせるマジックではないかと思っております」
ほう。
「語られるモノローグはそれぞれ極めて重たい内容なんだけど、不思議と他人事を語っているかのようにさらさらと語られていく」
ふむ。
「中学校の生徒の思春期の残酷な心理状態は、それを辿ってきた者やくぐり抜けてきた者には、共感出来る部分があるのではないかと思う」
ほう。
「『それ』は決して『異常』な物では無く、誰しもがもしかしたら思ってしまうかも知れない心理状態・・・。ただ、さすがに『犯人』の心理状態は理解し得る物では無かったけど・・・」
なるほど・・・。
「しかし、氏はこの作品を含む作品集がデビュー作であったと文庫の表紙に書いてあったので、最初からこのポテンシャルはかなりなものだと思うね」
ふむ。今後が期待できる作家さんというわけだな。
どうかね、この作品はお勧め出来る作品かね。
「ちょっと異色のミステリーですが、独特の切り口が淡泊な(?)怖さを感じます。決してホラーではありませんが、その恐怖感はお勧め出来ます。ただ、前述したとおり、どこに感情移入するかにより怖さを感じない人もいるかとは思います。文章は平易で丁寧、少々表現が説明的なところもありますが、全体としては極めて読みやすい。さっと読めると思いますので、通勤通学のお供にも良いと思います」
なるほど。
まあ、今後に期待の作家さんであるということだな。
「もし、もっと救われない恐怖を求めるのでしたら、道尾秀介氏の『向日葵の咲かない夏』をどうぞ。読後の後味の悪さは、もう、どう表現して良いのか分からなくなります」
少々投げっぱなしであるが、湊氏の今後の作品に期待しつつ今回は終わる。