いらっしゃいませ。
もうすぐ夏の甲子園大会ですね。まあ、野球はよくわからないんですが、かち割りの季節です!
過日彼は、桜庭一樹氏の小説『GOSICK』シリーズの、短編集『GOSICKs(ゴシックエス) -ゴシックエス・春来る死神-』を読了したらしい。今日はそれについて感想などを書いてみたいそうだ。
「『GOSICK』シリーズの前日譚的な短編集で、主人公の二人、久城一弥とヴィクトリカ・ド・ブロワの出会い、また、名脇役たちの登場といった内容になっている」
ほう。
では内容とかを少し書いてみるかね。
「前述したように連作の短編集になっている。久城一弥が留学後初めて巻き込まれる事件や、一弥のクラスメートアブリルの登場などの物語が語られる。
第一次世界大戦後の1923年・秋、ヨーロッパの小国ソヴェールに、極東の島国・日本から、久城一弥は留学してきた。言葉の壁、不慣れな環境、また、貴族の子息・令嬢が通う学校であるため、なかなかその空気になじめない。しかも、<春やってくる旅人が死をもたらす>という怪談が学内にあることから、黒い髪と瞳を持つ久城は『死神』クラスメイトの間でささやかれている・・・。孤独な半年を過ごした春、噂通り近くの村で殺人事件が起こってしまう。殺人現場に居合わせた久城は容疑者にされてしまうが、一人の貴族の娘が『退屈しのぎ』に気まぐれに救いの手をさしのべた・・・」
ずいぶんとアバウトなあらすじだな。
「連作短編なので、まあ、こんな感じです」
『貴族の娘』はもちろん主人公のヴィクトリカであるわけだな。
「まあ、そうですね。がんばってネタバレにならぬよう気をつけます・・・」
『GOSICK』本編と、この『GOSICKs』の違いは何かね。
「もちろん長編と短編集という違いもありますが、本編は主人公たちが、出かけた先で事件に巻き込まれそれを解決していくのに対し、『GOSICKs』では、探偵役のヴィクトリカが自らのテリトリーから出ることはない。事件の謎を持ってきた久城一弥に対し、ヴィクトリカは推理のみを用いて事件を解決していきます。いわゆる『安楽椅子探偵』というやつですな」
なるほど。
「おそらく桜庭氏の著書の中でもっとも平易に書かれたであろう軽やかな文章。キャラの立ち方もあり、物語は軽やかに進んでいく」
ふむ。
「一つの章も読みやすい長さ。すらすらと読める。元々がライトノベルなだけに、きわめて読みやすい。が、反面物足りなさも若干あるが・・・」
ふむふむ。
「主人公の一人、ヴィクトリカは魅力的なキャラクターであるが、そのイメージがなかなか脳内でヴィジュアル化しない」
ほう。
「まるで、“ビスクドールのような端整な顔立ち”の少女という設定だが、その表情には老成したものも見えるというキャラクターなのだが、富士見書房版の表紙絵は、西洋のビスクドールというより日本の萌えキャラといった感じで画かれており、文章とのイメージのギャップがあり、どうも上手く『西洋のヴィクトリカ』をイメージすることを阻んでいる・・・」
ふむ。
「たぶん、萌えよりも、もっと悪魔的な何かを持った感じのキャラクターではないかと思うんだけどね・・・」
なるほど。
「風の噂ではアニメ化されるとか。まるで老人のような声という設定のヴィクトリカの声がどうなるか・・・。設定通りのリアルを求めると萌え要素がどんどんスポイルされていくので、そのあたりのバランス取りが難しいかな」
ふうむ。
で、今回の作品は皆様にお勧めできる作品かね。
「『GOSICK』シリーズを読んでいる人なら読んでおく方がよいかな、と。ただ、読み応えはそれほどないので、推理小説を求めてとか、ゴシック・ホラーを求めてとかいう方には内容的に物足りないのでおすすめできませんが」
なるほど。
「あ、あと桜庭氏はこのヴィクトリカというキャラクターが結構気に入っているんだなという気はしましたね。具体的にどこと言われるとあれですが」
ふむ。
かなり淡泊な感じではあるが、今回はこのままで終わる。