Cafe Ligia-exotica / 純喫茶 船虫

よしなしごとを。読書とか映画とか観劇と港の街の話しとか

読書感想文 『ラットマン』 道尾秀介 を読んだ

 いらっしゃいませ。


 暑さ寒さも彼岸まで、らしいです。まあ、工夫して暑さをしのいでください。

 涼しくなったら、白湯も出始めるでしょう・・・。




 過日彼は、道尾秀介氏の小説、『ラットマン』を読了したらしい。今回はそれにつての感想をさらっと書いてみたいそうだ。道尾作品も結構読んでいるな。










「・・・うーん、実のところそれほどファンということもなくて・・」





ほう?






「初めて読んだ道尾作品の『向日葵の咲かない夏』に結構なダメージというか衝撃を受けて」





・・ほう。




「なにせ、最初から最後まで全くの救いのない(最後は果たして救われたといえるのだろうか?)物語に読み終わってからものすごい疲労感が残って」




ほう。




「まあ、そのえげつない衝撃が再びあるのかなと思って何冊か道尾作品を読み続けてみたわけだけど、残念ながら現在までのところそこまでの衝撃を持った作品には出会えていない」





ふむ。





「ただ、基本的に救いのない小説が多く、陰湿な感じでじっとりとしていて、表現がくどく、粘着質な感じのものが多い」






・・・ほう。





「今回読んだ『ラットマン』もくどい目の表現に、じっとりと粘着質な内容。しつこく灰色な感じが迫ってくる。道尾作品らしい構成」





・・・なるほど。まあ、今回も例によって例のごとくネタバレしてしまうかも知れないので、未読でこれから読もうかなという人は注意してもらいたいということで。
では、内容とかをちょっと書いてみたまえ。





「サラリーマンの姫川亮は、高校時代からの同級生とエアロスミスコピーバンドを組んでいて、年に何回かライブハウスでライブをし、そのための練習に時々集まっては練習スタジオに入っていた。

 彼は幼い頃に仲の良かった姉を事故で失い、また、父も脳腫瘍で同じ時期に亡くしており、その頃の記憶を未だに引きずったままでいた。また、彼の母親も二人の家族の死を境に表情を無くしてしまっていた。

 彼は、元バンドのメンバーの女性、ひかりに同じような影を見いだし引かれあい交際を続けていたが、同時に光の妹の桂にも引かれていく。

 ある時バンドのメンバーは練習スタジオで、ひかりが倉庫で圧死してしまうという事故を目撃する。この事故は、本当に事故なのか。それとも事件なら唯一犯行が可能であった姫川が、桂との関係により邪魔になってしまったひかりを殺害したのか。過去の姫川の姉の事故死の謎とともに、事故は事件へと変貌し、姫川は自分の過去の記憶と対峙することになる・・・」





むう、またずいぶんと内容に触れまくったあらすじであるな。





「ちょっと内容が入り組んでいるので、内容を削りにくかった・・・」




ふむ・・。




「この作品も、ほかの道尾作品のご多分に漏れず、表現がしつこく粘着質。過去のトラウマを抱えた主人公の心理を表現している文章は特に粘っこく書かれている」





ふむ。





「ただ、くどすぎると言うことはなくて。個人的には、“中学生の天才くさいピッチャーとやたらとその関係に悩む中学生キャッチャーの小説”に比べたら全然普通の感じ」





キミの表現も面倒くさいな。素直に『バッテリー』と書けばいいのに。
というか、あさのあつこ作品の回りくどい文章に書き方が嫌いなのだろう。





「・・・・・何度も何度も同じことを表現を変えてくどくど言い続けるところとか、全く感情移入できない登場人物の心理描写とかにどうも疲れます。あ、この程度で炎上とかしないですよね?まあ、しても放っておくけど・・」





まあ、話がそれたので『ラットマン』の感想とかに戻りたまえ。





「今作は、一応ミステリーの体裁をとっているので、読者は『犯人』を文章で追うことになる。同時に主人公の姫川亮の過去の記憶も追っていくことになる」





ふむ。





「なかなかにヘビーな記憶で、もし自分自身にそのようなことが起こったらかなり重いトラウマになるんじゃないかと思われる。しかしながら、道尾作品にはこういったトラウマを持った登場人物が普通に登場することが多く、ほかの作家さんの作品に比べると比較的さらっと描かれている気がする」





ほう。





「そして、そのトラウマからの救済が最終的にはあり、その救いがあるから物語が終われる的な感じの作品が多い、かな?中には全く救われないものもあるけど」






ふむ。






「今作も、起こってしまった事件は別にして、主人公には最終的にほんの少しだけ光が差すような感じで終わっている。長い苦しみをほんの少しだけ氷解させるような・・・」






ほほう。
・・・あまり語るとネタバレするかもだぞ。






「・・ネタバレ的になっているついでに書いてしまうと、道尾作品(特にミステリー)は、単純に容疑者くさい登場人物は、」






その辺りにしておきたまえ。

で、どうかね。この作品はおすすめかね。





「なかなかに面白かったと思います。バンドのメンバー内での事件てことで、バンドが演奏する『Walk this way』がやたらとしつこく書かれますが、そのくどさを我慢すればかなりな良作ではないかと思います。ちょっとひねくれたミステリーをお探しの方、理詰めのトリックより心理描写に重きを置きたい方、お勧めかと。ただ、カラッとした感じは全くないので、全体のじっとりした感じ、粘着質な表現に引きずられない方のほうが読みやすく感じるかも知れません。通勤時の暇つぶしにいかがでしょうか」





なるほど・・。
まあ、また何か面白い作品があれば紹介していくのだぞ。


今回はこの辺りで終わる。