Cafe Ligia-exotica / 純喫茶 船虫

よしなしごとを。読書とか映画とか観劇と港の街の話しとか

読書感想文 『遠まわりする雛』 米澤穂信 を読んだ

 いらっしゃいませ。


 ・・・この間気がついたんですが、ウチの店には爪楊枝が必要ないっぽいんですよ・・・。   まあ、以前からぼんやりとは分かってたんですけどね・・・・。





 過日彼は米澤穂信氏の短編小説集『遠まわりする雛』を読了したらしい。今回はそれについての感想などをへねもねと書こうとしているらしいが、どうも筆の走りが悪いらしい。どんなかんじかね。








「端的に言うと、面白くなかったので、感想とかをどう料理していいか分からないという感じなんだよね・・・」





ほう。面白くなかったと。





「まあ、途中で投げ出してしまうほど苦痛であったわけではないんだけど、だらだらとした物語がだらだらと7編収録されていて、最後までほとんどだらだらとして終わる・・・」






ふむ。






「もう少し起伏がないと、読む方もつらい」







・・・・なるほど?
どうかね、内容とかに触れることは出来そうかね。







「短編集なので、あらすじに触れ出すときりがないので何とも・・・。内容的には氏の青春ミステリー小説“古典部シリーズ”の第4集にあたる。それまでの1〜3集は長・中編。今回は短編集。本編の1〜3集のそれぞれの後日譚という形の物語で構成されている。


 主人公の折木奉太郎が県立神山高校へ入学して、部員数ゼロで、廃部寸前であった“古典部”という何をするのかも分からない文化部に入部し、その他の登場人物達もなんだかんだで入部して、ぎくしゃくした1学期を送りながら“古典部ってそもそも何をする部活だ?”という学校の日常的な謎を解いていくのが第1集の『氷菓』。登場人物達が学校に慣れた夏休み終盤、文化祭で2年F組の発表である自主撮影のミステリー映画のエンディングが尻切れトンボになっているのでその“エンディングを探す”のが第2集の『愚者のエンドロール』。二学期に入り、学校最大のイベント、文化祭で不可思議な盗難事件が起こる。盗難事件の解決と、古典部唯一の文化系の部活動らしい活動である文集“氷菓”の完売を目指す第3集『クドリャフカの順番「十文字事件」』。

 今回の第4集である短編集は、1,2,3集のそれぞれの間を埋めるような形になっている。第4集を読むことで1年間の物語となる。因みに単行本では既に発売されている第5集では登場人物達は高校2年生に進級しているそうだ。」






ふーむ。






「第4集の各章のタイトルを見ていこう。



・やるべきことなら手短に   (入学1ヶ月。第1集の事件は解決していない)


・大罪を犯す    (3人であった古典部に4人目の入部者が入ったあと。6月)


・正体見たり   (8月。夏休み。第1集の事件は解決している。第2集の事件の前)


・心あたりのある者は   (二学期・11月。文化祭以降。第3集の事件のあと)


・あきましておめでとう   (正月。冬休み)


・手作りチョコレート事件   (三学期。バレンタインデー)


遠まわりする雛    (春休み。四月三日。進級直前)


まだ文庫になっていない第5集では、2年生の1学期からスタートするんだろう」






ふむ。






「基本的に学校で起こった身近な出来事を追いかけていく物語なので、本編である1〜3集もかなり小粒な印象。それが短編ともなると取り上げる事柄はもっと小粒になり、本当に登場人物達のパーソナルなストーリーばかりとなる」







ふむふむ。






「そのためか物語に盛り上がる部分がない物ばかりで、主人公のむやみに長い一人語りをだらだらと読み進めていっているだけという印象になってしまう」





・・・なるほど。





「一応ミステリーではあるが、謎解きらしき謎解きはない。基本的にホームズ役である主人公が一方的に謎を解いて物語が終わってしまう。ミステリーというよりは登場人物達に起こったイベントをだらだらと読み進めて行っているだけという印象で終わる」





ほう。





「ただ、表題作の『遠まわりする雛』に関しては、登場人物達の今と未来に対する心情が描けていて、続巻にいい伏線になっているのではないかと思った。もちろんこれもミステリーという名目の体裁であるが、謎解きらしき物はないのだが」





要するにミステリーとして消化不良と言うことか。






「うーん、もう少しちゃんとした謎解きをするか、もしくは全く謎解きをしないで登場人物達の日常の物語とするか・・。どちらとしても中途半端な感じは否めない・・」






なるほど。






「氏は『このミステリーがすごい!』の2010版の作家別得票数が1位と言うことだが、その辺りはどうも『?』な感じがする。氏の作品で映画化され公開間近の『インシテミル』も、それほど強烈に興奮させられる作品ではなかったし。まあ、面白くないわけではないけど」





そんなものか。






「思うに、氏はまだまだ自分のスタイルを模索し続けているのではないかと。まだ、いろいろと伸びシロのある作家さんなのではないかと思う。一つしっかりした形になればぐっと来る作品が出てくるのではないかと思う」






なるほど。

さて、今回読んだ『遠まわりする雛』であるが、お勧めできる本かね。






「・・うーん、氏の“古典部”シリーズの1〜3を既読で、この先をさらに読む予定であるという方は読んでおいて損はないかも知れません。それ以外の方はこの本単体では全く意味をなさないと思うので、興味があるという方は既刊を読んでからお読みください」





あまりお勧めできないと言うことだな。

まあ、そんなときもある。また何か面白い物があれば紹介していくのだぞ。