Cafe Ligia-exotica / 純喫茶 船虫

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CDレビュー 『SHOUT AT THE DEVIL』 by MOTLEY CRUE

 いらっしゃいませ。

 町中に金木犀の香りが漂っています。秋の香りと共に水もどうぞ。




 今回も彼は記事にすることがないという、半ばあきらめに近い顔で魔窟と化したライブラリーから皆様にお勧めできるようなCDを探そうと無駄な努力をしているようだ。やはりどのような方にでもお勧めできるという前提の元で書き始めた企画なので、ぼちぼちその企画にそったものをレビューしてほしいものだ。

今回のセレクトはどういったものかね。






「名盤です。間違いない」





『SHOUT AT THE DEVIL』 by MOTLEY CRUE

1983 18P2-2752

Produced by Tom Werman




またヘビメタか!





「まあ、ジャンル的に言うとLAメタルとかに分類されるアルバムなので、有り体に言えばメタルだね」






もはやどこに対して発信したいのかがさっぱり分からん・・。






「80年代前半に起こった“LAメタル”というムーブメント。その中心的な存在であったのがこのモトリークルーだ」






・・・ふむ。






「ジャケ写を見ても分かるとおり、当時このセカンドアルバムを発売した彼らは、古き良きヘビメタさんというビジュアルを前面に押し出して売っていた」






そのままだな。





「しかし、当時のヘビーメタル/ハードロックシーンにおいて、大前提としてあったものがこのバンドには無かった」





ふむ?





「この当時、“メタルのバンドのギタリストは早弾きである”というのがお約束であった」





ふむ。





「・・・しかしながらこのバンドは違った。ギターのミック・マーズ、速く弾けない!」





あらら。





「まあ、このアルバムでも要所要所でタッピング(当時はライトハンド奏法と呼ばれてたね)を決めたりするが、基本的に速くない」






ふむ。






「・・・しかしながら、このアルバムはカッコイイのだ!別段アリンコが列を作っているような細かいフレーズを弾くことはなくても、荒々しくラフなパワーコードで押しまくるその姿がカッコイイ」





ほう。





「正直あらゆる面で演奏は大したことはないのだが、その荒削りなところがまたカッコイイのだ」





ふむ。





「恐らく昨今のラウド・ミュージックを聴いて育った世代には、何だかその音の作り方が薄っぺらく聞こえるかも知れない。逆にパワーコードじゃないほうがもっとブッとい音に仕上がるような気もするし、音作りももっとファットに出来るはずなんだけど、そのスカスカした感じがクセになるし、それが時代であった。彼らはLAのストリートの寵児であった」





ほう。






「因みにではあるが、例えばこのアルバムの3曲目、『Looks that kill』という曲があるのだが、出だしからやたらと薄っぺらく感じる(かっこいいんですよ)リフから曲が始まるのだが、薄っぺらいわりには(格好いいんです)、どう聞いてもこの曲の構成では少なくとも3本以上のギターをオーバーダブさせないと成立しないと思われるのだが、それだけ贅沢にオーバー・ダブしているとは思えない淡泊さ。だが、それが良い!」






・・・どうでも良いが、3本以上のギターをダブった原曲を、彼らはライブでどうしているのだ。






「ライブアルバムを聴くかぎりでは、ミック・マーズ一人でやってます」





・・・なるほど。





モトリーの魅力に、ボーカルのヴィンス・ニールの声の良さがある」





ほう。





「・・・もちろんテクニカルなボーカリストではないんだけれど。大変声質がヘビメタさんなんだ。バンドの雰囲気にマッチしている」





ふむ。





「あと、ツーバス(ツイン・キック。バスドラムを2つ並べたドラムのセッティング)をドコドコ蹴り続けるカッコ良さというのをはじめて味わったアルバムでもあった。正直ドラムのトミー・リーも全くテクニカルなドラマーではないので、キックに関しては踏み続けるというパターンがやたらと多いんだけれども、そのドコドコ感が格好良かった。このカッコ良さにあこがれて、後に大枚はたいてツインペダルを買ってしまったほどだ」





散財したな・・。






「最近のラウド系のバンドがこのアルバムと同じようなものを創ったら、もっと分厚く、もっとコアなものを創れるとは思うんだけど、その、“作り込まれていない”感じが当時のストリート系のサウンドであったんだなと改めて思ってしまう」






ふむ。





「因みに彼らは生き様もそれぞれかなりロックンロールな人たちで、ベースのニッキー・シックスはヘロインの過剰摂取で少なくとも1回は心肺停止状態になってるし、ボーカルのヴィンス・ニールは飲酒運転のあげく事故を起こし、助手席に乗っていたハノイ・ロックスのドラマー、ラズルを死亡させてしまい禁固刑を受けている。ハノイ・ロックスはこの死亡事故が原因で解散している。因みに事故を起こした本人のヴィンスは、模範囚として刑期はわずか18日であったそうだ。アメリカの法制度は理解に苦しむ。過失運転致死ってのはそんなに罪の軽いものなのだろうか?」





ふむ。ロックであるな・・・。






「このあたりのロックさ加減もモトリーが格好良く見える要因の一つなのかも知れない」






なるほど・・・。

まあ、ここまで褒めてるんだかけなしてるんだか分からない感じで記事を書いてきたわけだが、どうも名盤なのかどうかが今ひとつはっきりしないな。







「名盤です。お勧めしますね。この荒々しい感じが、後のストリート系の雄、ガンズ・アンド・ローゼスなんかに繋がっていくのです。ガンズを聞く前に、その前の流れを知っていくのも良いかと思います」





ふーむ・・・。





「因みにこのアルバムのあと、モトリー・クルーは3,4,5枚目とヒットアルバムを連発していきます。特に5枚目のアルバム『Dr. Feelgood』は全米1位を獲得、700万枚を売り上げる大ヒットアルバムになるんだけど、その後にグランジ系のヘヴィ・ロックがムーブメントを起こしてヘビーメタルというジャンル自体も低迷していき、バンドも低迷していきます・・・」







なるほど・・・。






「あ、しかしながら彼らは現在もオリジナルメンバーで、最前線で活躍しておりますよ」






ふむ。
正直長い記事であったわりにはアルバムの良いところは全く伝わらない記事であったな。致し方なし。


投げっぱなしではあるが今回はこのあたりで終わる。