いらっしゃいませ。
『某ハンバーガー屋のコマーシャル、セリフがウザくてイライラするんだよ!!!』
え?何だかこう叫ぶのがトレンドらしいって、さっき・・・。
あ、こちらのグラスでどうぞ。
過日彼は、恩田陸氏の小説、『ネバーランド』を読了したらしい。今回はそれについての感想とかを書くとか書かないとか。
恩田氏の作品は久しぶりかな。
「恩田作品て、時々本当に着地点不明で終了するものがあって(確信犯)、それにぶち当たると、とてつもなくもやもやした気分で読み終わってしまうので、ちょっと避けてたんだ」
ほう。
今回読んだ作品はどうかね。
「かなり初期の作品らしく、一応のエンディングが用意されていましたね」
ほう。
では、恒例の内容の紹介でもしておくかね。
「高校二年生の美国(よしくに)は、九州の有名進学校の寮に暮らす。男子校で、歴史のある学校。冬休み、寮生の殆どが帰省する中、美国の友人の寛司(かんじ)が帰省せずに寮に残るというので、特に何か目的があるというわけではないが、美国も帰省せず寮で冬休みを過ごそうと考える。
また、他にも光浩(みつひろ)と言う学生も寮で冬休みを過ごすという。人気のない寮での3人だけでの、自由で、しかし妙に孤独な休暇が始まる。
そこに通学組の統(おさむ)が、自宅に帰っても誰もいないからと言う理由から、寮に遊びに来て、半ば住み込むように転がり込む。
クリスマス・イブの夜、統は幼少時代の意外な過去を告白し始める。それから夜になると、徐々に4人の口から生い立ちなどの『告白』が語られ始める・・・。
少年達4人の7日間の告白(?)物語・・・。」
ふーむ。どうも良く分からない内容だな。
「まあ、恩田作品なので、すぱっと分かり易いエンタメではありませんな」
なるほど。
恩田作品的特徴とかあるかね。
「まず、読み始めてすぐに舞台や景色がすぐに脳内でビジュアル化されます。決して舞台をくどくどと文章で表現しているわけではないけど、どんな学校で、どんな地域に立ち、どんな学生寮なのかというイメージがすっと具現化されます」
ほう。
「これはキャラクターにしても同じで、主要登場人物の4人に関しても見た目に関する表現が少ない割にはすぐにそれぞれがどんな感じなのかがイメージできる」
ふむ。
「多分文章の感じがそうなんだろうね」
なるほど。
で、登場人物達はどんなイメージになったのかね。
「かなりなボーイズ萌ですね。有名進学校・男子校・男子寮・勉強も出来てスポーツも出来て、それぞれにちょっと影があって・・・。脳内ではそれぞれかなりのイケメンのBLな感じのキャラクターにビジュアル化されましたね・・・」
まあ、あくまでキミの読んだときのイメージでしかないからな。
未読の方はこの文章のイメージに引きずられないようにして頂きたいということで。
あ、あと例によってネタバレ注意報ということで。
「ちょっと優等生タイプの(と言っても酒盛りはするし、一服やったりもする)居残り組み3人に、少し毛色の違った通学組の統が顔を出す事により、お互いプライバシーなどにあまり干渉しないという暗黙のルールがゆっくりと崩れていく」
ふむ。
「酒に酔った統は、幼少時代の母の死が、自分が原因で、あまつさえ母を殺してしまったのは自分だという話を始めてしまう」
それはヘビーだ。
「やがて、美国は幼少期の誘拐未遂のトラウマで女性に恐怖心がある事、寛司は両親が離婚調停中なので自宅に戻りたくないのだと言う事、光浩は妾の子で、実父の本妻に飼い殺し状態で生活の面倒を見てもらっていて、しかもその本妻と肉体関係を結ばされてしまいそれがトラウマになっている事など、それぞれが重たい過去を告白し始める」
さらにヘビーだ。
「これを脳内のBLキャラがやるので、脳内ではかなりなメロドラマ具合であった」
なんだそりゃ。
「それぞれのトラウマや過去を7日間のちょっとどろりとした共同生活でそれぞれが乗り越えていく」
ふむ。
「読み手によっては青春のさわやかな共同生活に見えると思うが、どうも色眼鏡で見ているのかそれぞれが仮面を被ったまま生活をして会話をして、と言う風にうつってしまった」
ふん。それは?
「彼らのそれぞれの告白は、どれもが結構ヘビー。告白し終わってから生じるそれぞれのぎくしゃくさ加減はかなりなものがあるのだが、次の日の朝は意外に平気な感じで会話をして、普通に朝食をとる」
ほう。
「本来、『俺は妾の子で、父と母は本妻をおいて心中してしまって、自分はその瞬間に天涯孤独になったが本妻が急に面倒を見ると言い出したと思ったら強引にレイプ同然で肉体関係を持たされた。中二の時に』なんて夜告白されたら、次の日の朝のぎくしゃくさ加減はハンパなものでは無いと思うが、彼らは結構平然と普通の会話をする。正直、そんなシチュエーションに陥った事がないので何ともいえないが、なかなかお互いに顔を合わせにくいと思うのだが」
そこが嘘っぽいと?
「嘘というより、現実感がない『物語的』な感じがしてしまうと言うか」
ふむ・・・。
「恐らく恩田氏は、この4人だからこそそうした微妙な葛藤も、朝には消化して会話出来るという風な感じで書いているんだと思うけど、どうだろう?」
ふーむ。
「統は、『母を殺したのは自分かも知れない』という告白をした次の日の朝、シーツを首つり人形のようにぶら下げたものを目の前につり下げられるという、普通に考えたらかなり悪質ないたずらに遭うが(後にそれほど悪質な意図はなかったという風に説明的なセリフがあるが)、その夜も酒瓶を抱えて寮を訪れる。普通の神経ならその日の夜にまた遊びに行こうなどと思わないと思うのだが、行ってしまう」
ふむ・・・。
「あと、いくら進学校だろうが、心にトラウマを抱えていようが、会話の仕方があまりに大人。25歳くらいの感じ。大人びているというか。そのあたりの会話の仕方にも、ちょっと耽美系BL物の匂いを感じてみたり」
なるほど・・・。
しかし偏った感想であるな。
要約すると、何だかBLな話でしたと言う事か?
「たまたまキャラクターが脳内でそう変換されたのでBLな感じですが、まあ、それは読み手によって色々でしょう・・・」
ふむ。
「それよりもキャラクターの心理状態に共感出来ないというほうが重要ですね」
なるほどねえ・・。
「それも読み手によっては共感出来る部分であるかも知れませんが」
なるほど。
で、どうかね。この作品はお薦め出来るものかね。
「恩田作品が好きならお薦め出来ますが、なにかhでなエンタメが好きな方は読んでいても退屈かも知れません」
ふむ、なるほど。
まあ、また何かお薦めの作品があれば紹介するのだぞ。
今回はこのあたりで終わる。