Cafe Ligia-exotica / 純喫茶 船虫

よしなしごとを。読書とか映画とか観劇と港の街の話しとか

読書感想文 『赤朽葉家の伝説』 桜庭一樹 を読んだ

 いらっしゃいませ。


 昔、どこぞの清涼飲料水が、“キューカンバンの味”、すなわちキュウリ風味の清涼飲料水を期間限定で販売してましたよね。その後もいろいろなフレーバーで期間限定ものを販売してるわけですが・・・。バオバブとか・・・。



 ・・・いや、ちょっとね、ゴーヤをつけ込んでみたんですよ。ヨドガワ・ブレンドに・・。


物は試しってね。



・・・いやですよ、自分で試すなんて!試されてくださいよ!さあ、どうぞどうぞ!!





 彼は過日、桜庭一樹氏の小説、『赤朽葉家の伝説』を読了したらしい。今回はそれについての感想なんかをしずしずと書いてみたいそうだ。

 今回ちょっと読むのに時間がかかったようだが。






「予想していたより長かった気がします・・・」





ふむ。





「・・・しかしながら、この本、かなり面白いです!」








おお、唐突に褒めておるな。





「どう面白いかを端的に伝えられない、不思議な面白さなんですが、とにかく面白い」





キミのリスザル脳はなかなか物事をまとめることが苦手なようだからな。

処理能力の限界なのだな、きっと。






「本の面白さを伝える苦労のまえに、今回読んだ本の外観を・・・」






外観の写真は載せたのではないか?





「購入時にはこのような状態でした」







ほう。





「“サイン本”という帯が掛けられていて」




ふむ。





「中はこのように!」






おお?サイン?





「これを見せたときの反応が、我が実弟と、“素敵女子”AO嬢の反応が同じで」





ふむ。





「開口一番、『印刷じゃないの〜?』」





あらら。






「二人には、それぞれ全く別な場所でこれを披露したのだが、行動まで同じで、サインの裏を透かしてみて、インクが染み込んでいるのかどうかを確認して、やっと『・・・少なくとも書いてますねえ』だと」





わかりやすい・・・。






「因みにAO嬢はさらに、『きっと購入したJ書店の店員さんの手書きですよ〜』と言っておったが」





もしそうだったら悲しいな。変にもの悲しい。





「まあ、真偽は定かではないけれど、きっと桜庭氏本人が書いてくれたんだと思いますよ。こんな感じで売ってるのって時々見かけますから・・・」






ほう・・。





「見かけたことはあったけど、好きな作家さんのが有った試しがなかったからねえ。珍しく売れっ子作家さんの、しかも買おうと思っていた本に“サイン本”なんて書いてあったら、ミーハー心が揺さぶられてしまいましたよ」






本当にミーハーだな。

さて、本題の、本の感想であるが。






「なんだか大河ドラマチックな、でもファンタジーな、現実であり幻想であり・・・。なかなか不思議な感じでした」






ほう。

では、内容的な物を書いてみるかね、恒例であるが。ついでにこれも恒例であるが、ネタバレ注意報発令は相変わらず発令されるということで。






鳥取県の西部、紅緑村には、古くから“たたら製鉄”で財をなした旧家“赤朽葉家”(あかくちばけ)があった。へんぴな田舎にありながらも、製鉄で築いた財で、大きな屋敷を、村を見下ろす高台に、たたらと共に建てていた。

 この地方には、古来から村などの地域に属さない“山の人”達が、中国山脈の奥深く住んでいると言われていた。村には属していないが、弔いなどがあると“山の人”達は村に手を貸すことがあった。

 “山の人”達は、1943年のある日、村に一人の子供を置いていった。なぜかは分からないが、山から里に置いていったのだ。紅緑に住む若夫婦は、その子を拾い、育てた。後に赤朽葉家に嫁ぐことになる、予知能力を持った“千里眼奥様”、万葉(まんよう)であった・・・。10歳になった万葉は、夏のある日、空を飛ぶ男を見た・・・。


 この物語は、1953年、千里眼の万葉・約10歳の時から始まり、娘の大ヒット漫画家、毛鞠(けまり)、さらに現代に生きる孫の“なんでもない”瞳子(とうこ)までの赤朽葉本家・三代にわたる女の話である・・・。」





うーん、よく分からない内容紹介だな・・・。






「何せ、女三代の大河風な内容なので、短くまとめることは難しい」





ふむ・・・。




「物語としては、祖母・万葉、母・毛鞠、そして孫である瞳子の物語であるが、さらに万葉の輿入れを決めた万葉の義母・タツを含めると、更に不思議な四代にわたる物語となる」




ほう。





「物語は、現代を生きる孫の瞳子が祖母から聞いた昔語りを、歴史的な事象と並べて語っていくという形をとっている」





ふむ。





「この本の面白さの一つに、この瞳子の語りの軽妙さという物がある」






ほう。





「歴史を語っているにしては重くなく、かといって軽いわけでもない。淡々と、しかしながら登場人物達の心象を明確に、極めてビジュアル的に聴かせて(見せて)くれる」





ほほう。





「風景や、キャラクターの印象などが、とても特徴的に語られ、脳内にふとその人物達の表情や動きが映像化されて再生されていく。それが実写的ではなく、なんだか宮崎アニメと水木キャラと、更に少女漫画的なキャラクター要素とかがミックスされた感じで再生されていく」






ほう。





「風景の描写も巧み。山陰のどんよりとした空を、どんよりとさせながらも重たくなく描いていく。不思議な感じで、実写的な、しかしながら“まんが日本昔話”のような・・・。そんな風景が浮かんでくる」






ふむ。





「因みに、祖母・万葉は、最初はまるでジブリ・キャラに市原悦子氏が声を当てているような感じで脳内で動き始めた」





ふーん。




「祖母の万葉の時代は、“男の強い時代”で、終戦からの高度成長の時代を万葉は男達を支えながら生きていく」






ふむ。





「娘・毛鞠の時代は、“男の強さの幻想に酔った時代”で、毛鞠は山陰地方では有名なレディースの頭として成長していく・・・。そして、なぜかいきなり流行漫画家になってしまうのだが・・・」





ふむ。






「そして孫の瞳子は現代の、どのようにして大人になって良いか分からない、“未来が定まらない時代”の物語。瞳子は母の強さも、祖母の不思議な能力も持たない自分がどのようにしてこの先を生きていくのかを、上手く探れずにいる。そして、母や祖母の生き方を語りながら、それぞれが残した“謎”の様なものを探りつつ、自らが生きていく道を模索しようとする」






ほう。





「ちょっと謎めいた旧家を舞台に、戦後からの日本を、女達の生き様を縦糸に、歴史的背景を横糸に、物語は進んでいく。その語りはちょっとノスタルジックで、心地よい感じ。そして、テンポがものすごく良い。速くはなく、しかしながら遅いでもなく。なんだか川の流れのようにさらさらと流れていく」




ふむ。





「物語に出てくる赤朽葉家の人々や、紅緑村の人たちもそれぞれが個性的で魅力的。物語に更に魅力的にしている」






ふむふむ。






「大河らしく、主人公である三人の女の、子供や主人、親戚などが多数出てくるが、それぞれが色々な物語を持っていて、読者を全く飽きさせない」




なるほど。





「栄枯盛衰を持って、まるで“神話の時代”のような旧家から、不景気に追われるリアルな“現代”まで、それでも細々と生き残っていく赤朽葉家。旧家という“歴史”がみせる“ファンタジー”。とても読み応えがあります」





なるほどねえ。

で、どうかね。この本はお勧め出来る本かね。




「さすがは“第60回日本推理作家協会賞”受賞作品。大変面白いです。ただ、個人的には“推理”でも“ミステリー”でもなく“ファンタジー”なのですが。まあ、そんなカテゴリー分けにははまらない魅力を持っています。戦後すぐの日本をご存じの方、ノスタルジックな雰囲気になれるかも知れません。何を持って大人と言っていいのか分からないと言う悩みを持っている方、語り手である瞳子に感情移入出来るかも知れません。老若男女、色々な方にお勧め出来る良作であると思います」







褒めてるな。






「個人的には、氏がこの後に直木賞を取る『私の男』より、こちらのほうが断然面白いと思います」





褒めるなあ。

まあ、面白い作品であるということだな。


また、何か面白い作品があればこの記事で紹介していくのだぞ。


しかし、リスザル脳のキミでは、今回の作品はちょっと感想をまとめにくかったようだな。精進するように!


今回はこの辺りで終わる。