Cafe Ligia-exotica / 純喫茶 船虫

よしなしごとを。読書とか映画とか観劇と港の街の話しとか

読書感想文 『姑獲鳥の夏』 京極夏彦 を読んだ

 いらっしゃいませ。


 ・・・窓が白くくもる季節になっていきます・・。

 結露って嫌ですよねえ・・・。





 彼は過日、京極夏彦氏の小説、『姑獲鳥の夏』(うぶめのなつ)を読了したらしい。今回はそれについての感想とかをちらりちらりと書いてみたいそうだ。

なかなか長い小説であったらしいな。




「結構な長編ですね・・・」











どんな感じであったかね。





「面白かったですよ、中盤からは」





なんだか含みのある物言いだな。





「出だしはなかなかグッと来る感じだったんですが・・」





では、例によって例のごとく、内容とかの紹介をしてみるかね。

もちろん、ネタバレ注意報発令ということで。





「一応分類としてはミステリーになるのですが、ファンタジーでもホラーでもいけそうな感じの小説でした。

 
 三文文筆家の関口巽は、学生時代からの友人である中禅寺秋彦に“カリスト”と呼ばれるゴシップ記事の内容について相談を持ちかけた。

 中禅寺秋彦は、“京極堂”という開店休業状態の古本屋を営業するかたわら、副業として“憑き物落とし”などの呪術(?)をおこなっていた。また晴明神社の流れを汲む神社の神主でもあった。


 関口が持ち込んだ話は、一年半ほどまえに、密室から男が忽然と消えたというもので、さらにその妻は二十箇月もの間、妊娠状態にあり、未だに出産する様子がないという。この不思議な話に、京極堂の副業の見地から意見を聞きたいというのだ。

 京極堂は言う。『この世の中には不思議なことなど何もないのだよ』と・・・。

 果たして密室から夫はどこへ消えたのか。妊娠状態が二十箇月も続く女性とは・・・」





ふうむ。
面白そうな感じだな。





「序盤から京極堂は(というより作者は)、『心』と『意識』と『脳』の関係、また『記憶』と『脳の働き』、さらに無意識下で起こる『仮想現実』と『現実』の違いといった話を延々と繰り返す。ある意味堂々と伏線を引きまくることで前半のほとんどが終了してしまう」






あら。
その辺りがくどかったのかね。






「うーん、その辺りは結構興味を引く内容であったので、その説明的展開でだれることはなかった・・・」





ふむ。




「とにかく、前半で『見えないものが、見える』また『見えるものが、見えない』という仮想現実は、現実とは自分自身では全く区別することが出来ない、という事を繰り返し繰り返し京極堂の口から語られる」





ふむふむ。





「それを一応の“ワトソン役”の関口が分かったような分からないようなふうでひたすら聞き続ける」





ふむ。





「この語りでありワトソン役である男が、とてつもないおまぬけ具合で本当にイライラする!」





あら。





「ホームズ物におけるワトソンのようにちょっとは役に立てばいいのだが、全く役には立たないし、波風を立てるだけたてていっこうに解決の方向に至らないし、しかも“空気が読めない感”がものすごい」






ほう。





「作者が意図してこのようなキャラクターで登場させているのは分かるが、それでも読んでいて、物語の進行を妨げているだけのような気がしてかなりイライラさせられる」






ふむ。





「せめてもう少し愛されキャラなら良かったと思うけど、個人的にはどうもキャラクターに魅力を感じられない」






ふむ・・・。

まあ、読み方にもよるんだと思うが・・・。






「この空気読めないキャラは、設定として、学生時代に鬱病を発症し、鬱状態時の記憶を自らの記憶の中に封印してしまっているという設定である。ネタバレであるが」






ほう。






「その設定が生きてくる終盤までなかなかにイライラさせられた。しかもこのキャラクターは物語の“語り”なので、常に登場している。読めども読めどもフラストレーションじみた物があり、読み手からスピードを奪う」





あらら。





「ワトソン役がここまで『?』な感じで良いのか?そして物語の終盤になって、やっと主人公の京極堂が活躍し始めて、急速に盛り上がってざっくりと終わる」





ふむ・・・。





「究極に面白くなければ読むのをやめてしまえばいいのだが、これまた何となく先が気になる作りになっていて、何とか終盤の盛り上がりまで読者を引っ張ってしまうから始末が悪い。面白くないのか?と聞かれれば、答えとしては『面白い』のだ、この作品は」





ふうむ。





「この語りの関口巽は、鬱病時のトラウマにより、『見える』はずの物が『見えない』状態となり混乱を招いてしまうのだが、今作でそのトラウマから脱出出来たであろう感じなので、次の作品ではこのまどろっこしさから少しは脱却していれば・・・。かなり魅力的な作品なんだが・・・」






・・・ふむ。

それはどうだろうな・・・。





「個人的にはひたすら『仮想現実』について語る京極堂のキャラクターは好きであるのだが、この作品、映画になっている。これだけの情報量を持ったテキストをどれだけ映像作品に落とし込めたのだろうか。ひたすらどうでもいい話(もちろん全て伏線なのだが)をしゃべる続けるだけのキャラクターになってしまっていないかとか、ちょっと思ってしまう」






なるほどねえ・・。

で、どうかね。この作品は、お勧め出来る作品かね。







「ちょっとした暇つぶしというわけにはいかないボリュームなので、読む人を選びます。文章を読む、ということが好きな方には良いと思います。ホラーや、ミステリーや、超自然的な話、心理学的な話に興味のある方には読みやすいかも知れません。あと、まどろっこしい展開に我慢出来る方。というわけで、少々読む人を選ぶと思います。終盤の展開はなかなか面白いので、決して下らない作品というわけではありません。というか、作品としては大変面白いと思います。じっくり腰を据えて読みたい方はぜひ」





なるほど。

もしかしたら、次作の『魍魎の匣』ではもう少しわかりやすい展開かも知れないけどね・・・。

まあ、興味があったら続きを読むのも良いかも知れないな。


また何か面白いものを読んだら感想を書くのだぞ。



今回はこの辺りで終わる。