Cafe Ligia-exotica / 純喫茶 船虫

よしなしごとを。読書とか映画とか観劇と港の街の話しとか

読書感想文 『ゴールデンスランバー』 伊坂幸太郎 を読んだ

 いらっしゃいませ。



暖房のきいた部屋で、キンキンに冷えた水・・・。どうですか?


“カーッ!”って言いながら飲んでください!







 彼は過日、伊坂幸太郎氏の小説、『ゴールデンスランバー』を読了したらしい。今回はそれについての感想をあーでもないこーでもないと書きたいそうだ。


映画化もされた話題作であるな。どうであったか。







「ここ2,3冊ばかしだが、読んだ伊坂氏の作品が、なんだかメッセージ性の強い作品が多かったのですが、この『ゴールデンスランバー』も、ある意味かなり強いメッセージ性があるのでは?と思わされる作品になっていますねえ・・・」






ほう・・・。

では内容とかに触れてみるかね。例によってネタバレ注意報ということで。








「元・宅配ドライバーの青柳雅春は、学生時代の友人、森田森吾に突然呼び出されて昼食を共にする。食後に急な眠気に襲われた青柳は、いつの間にか仙台市内の路上駐車の車中に森田と共にいた。そこで森田から告げられる『逃げろ、おまえはオズワルドにされるぞ』という言葉。やがて街中が騒然とし出す。どうやら市内をパレードしていた首相が、何者かの手によって爆殺されたらしいのだ。首相暗殺の濡れ衣を誰かに着せられた青柳。誰が首相の暗殺を?なぜ自分を犯人に仕立て上げたのか?警察は発砲も辞さない構えで青柳を追ってくる。とにかく逃げなければ!巨大な何者かから青柳は必死で逃走を図るが・・・」






なんだか分かったような分からないような内容紹介だな。






「追い詰められるシチュエーションを楽しむ(?)物語なので、これ以上書くと作品の面白さが無くなってしまいます」








ふむ。







「追い詰められて、極限の状態のはずの青柳(主人公)が、なぜだかそれほど悲壮感が無くて、時として達観しているなあと感じるシーンがあったりする。その少し飄々とした感じでもサスペンスでキャラが浮かないのが伊坂マジックというところか」







ふむふむ。








「ジャンル的にはやはり娯楽サスペンスに分類されるのかな?娯楽ではあるけれど、読み手に対して強いメッセージを送ってくる。あなたの信じている国家権力は、本当にあなたに誠実ですか。国は、政治家は、本当に信用出来ますかと」







ふむ・・・・。








「ごくごく普通の市民であった人物が、いきなり凶悪犯罪者に仕立て上げられる。平然と間違った警察発表がなされ、マスコミはそれを煽る。情報操作された世界では、操作するものが全てを握ることが出来る。あなたが観ているテレビの情報は、本当に正しいですか?えん罪ではありませんか?真実は見えますか?正義はありますか?何が正しくて何が間違いですか?誰かに踊らされていませんか?」







ふむむ・・・。







「この作品はあくまで娯楽作品。あくまでフィクション。でも作品はメッセージを投げかけてくる。みんな気をつけて。国家を、権力を、権力者を、思想を、鵜呑みにせず、自らの意志と意見を持ってと」







ずいぶんと重いな・・・。








「まあ、普通に娯楽作品として読めば良いんだけどね。ただ、最近読んだ『魔王』とか『砂漠』とかがそんな感じのメッセージを多分に含んだ作品であったので、今回読んだ『ゴールデンスランバー』にもその匂いを感じたんだ」








なるほど・・・。






「伊坂作品の良いところは、脇役のキャラも適当ではなく、しっかりキャラがたっている点が良い」






ふむ。






「この作品でも、影ながら主人公をフォローしていくキャラ達が、しっかりと描き込まれている」







ふむふむ。






「なんだか脇役がしっかりしていて、“ああ、きみなら青柳の窮地に対して少しでも力になれるに違いない”と思わず思ってしまう」






脇役のキャラがしっかりしているのは、物語に厚みが出て良いな。






「どんな登場人物にも生きてきた歴史があって、はっきりとした性格が存在するわけだからね。それを生かすことが出来れば作品の厚みはぐんと増すよね」






どうかね。この作品はおすすめ出来る作品かね。







「正直なところ、今回読むのにちょっと手間取りました。なかなか勢いに乗ってちゃっちゃと読めるという感じではなかったです(時間軸が行きつ戻りつするからかも知れません)。ただ、それはこちらの読み方に問題があったのかも知れません。あっさりエンターテインメントとして割り切って読むと、普通にサスペンスとしてさらっと読めるかも知れません。ただ、初期の伊坂作品と違い、エンターテインメントを前面に押し出しているわけではないので、それを求めてしまう方には普通に『死神の精度』なんかをお勧めします。ただ、決して読み物として面白くないわけではありません。通勤通学のお供に、奥様の午後の一時に、OLさんのカフェでの一服に、それぞれに良いと思いますよ」






なるほどねえ・・。

まあ、既存の伊坂作品を読んで感性があった方にはお勧めという感じかな?


また何か面白い本を読んだら感想を書くのだぞ。

今回はこの辺りで終わる。