いらっしゃいませ。
なんだかインフルエンザが流行っているとか。これで手をアルコール消毒してください。
ぷしゅー。
彼は過日、森見登美彦氏の小説、『四畳半王国見聞録』を読了したらしい。今回はそれについての感想とかをちまちまと書きたいそうだ。
珍しくハードカバーの本を購入したな。
「森見氏の本なので、ちょっと奮発しました」
ほう。
今回は短編集のようだが。
「短編というより、七つの連作短編になっております。それぞれの物語がリンクしております」
ほほう。
「リンクと言えば、この本に出てくる人物や、その人物が所属している団体などが、これまでの森見作品とリンクしており、これまでの森見作品を読んだことがある人には、“ああ、このサークルは・・・”みたいな感じでちょっとにやりとさせられる」
ふむ。
「例えば『四畳半神話体系』であったり、『夜は短し歩けよ乙女』であったり、『新釈 走れメロス』であったり。それぞれに微妙に繋がっていたりするので、既刊を読んでいる人にはお楽しみがちょっとだけ増える」
ふむふむ。
では、例によって内容に触れてみるかね。もちろんネタバレ注意報発令ということで。
「四畳半に引きこもる、阿呆な学生達の生き様を主観的に描いていく七つの連作短編。短編なので、あらすじ的な物にはちょっと触れにくい。なので、端的な紹介文が存在したのでそちらを見てもらえれば助かるのだが」
ほう。
それは?
「森見氏本人のブログに紹介文があったのでそれのリンクを貼っておきます。本人が自著の内容を紹介するのだから、これほどしっかりした内容の紹介はないのではないか?」
・・・・余程内容をまとめるのが億劫であったと見える。
「連作七編なんだ・・・。あらすじ七つ書くのって・・・」
やはり・・・。
「というわけで、感想なんかにうつりたいと思います」
むむう。
「端的に言って、既刊の森見作品に比べると、どうも『?』な感じがする」
ほう。
「森見氏の作品にある、“キラキラ”であったり、“妖しさ”であったり、“勢い”であったりするものが、どうもこの作品には欠けていると思う」
ほほう?
「同じ“腐れ大学生”の物語でも、『太陽の塔』や『四畳半神話体系』にあるようなうすぼんやりした妖しさがない」
ふむ・・・。
「同じ京都を舞台としていても、京都独特の“キラキラ”や“妖しさ”が格段に薄い。『夜は短し歩けよ乙女』や『有頂天家族』の“キラキラ”や、『宵山万華鏡』や『きつねのはなし』の“妖しさ”もない」
ふむむ・・・。
「『新釈 走れメロス』の勢い(というか、それぞれの作品が独特のスピード感があった)も無い」
なんだか大分厳しいことを言っているようだが。
「決してこの短編集が面白くなかったわけではありません。ただ、やはり、氏独特の“キラキラ感”が薄いのは何とも頼りない」
ふむ・・・。
「やはり森見作品は、キラキラしていてなんぼ、妖しくてなんぼ、流れるような文体があってなんぼ、という気がする」
ほう。
「特にあの、一部で固いと言われている独特の文体。あれは重要。というか、アレを文士体で固くて読みにくいとか言ってるヤツの気が知れないんだが。よどみなく流れてくる文脈は決して固くない。むしろ言葉の河の流れのようで気持ちが良いと思うのだが。まあ、若干流れの量は多いが、流れに乗ってしまえば全く苦にならない」
ふむ・・。
「ただ、今作は、その圧倒的な文章の勢いも少なかった」
なるほど・・・。
イマイチであったという事かね?
「あ、決して今作が面白くなかったと言っているわけではありませんよ。ただ既刊に比べると、ちょっと個人的好みからは外れているという事です」
ふむ・・。
どうかね、この作品はお勧めかね。
「森見氏好きは買いでしょう。ただ、これまで森見氏の作品を読んだことがないという方は、この作品でのデビューはしない方が良いと思います。森見氏デビューであるなら、普通に『夜は短し歩けよ乙女』とか『有頂天家族』とかをお勧めします。逆に既存の作品に出てくる変な団体達が気になるという方はぜひ読んでみてはいかがでしょう。森見氏好きの女子学生の皆さんには良いと思いますよ」
なるほどねえ・・・。
まあ、興味がある方は“買い”で、でも無理にハードカバーを買うほどでもなくて、文庫落ちを待ってもよさげな感じでありそうだな。
まあ、また面白い作品を読んだら感想などを書くのだぞ。
今回はこの辺りで終わる。