いらっしゃいませ。
心頭を滅却すれば・・・、水道水もミネラルウォーターの味わいに・・・。
彼は手持ちの機材がまた壊れてしまってとても悲しんでいるらしい。
「PCに接続していたモニタースピーカーが逝ってしまわれました・・・」
ほう・・・。
「まあ、もう発売すらされていない古いモニターであるし、中古で購入したしで、いずれはダメになるだろうなと思いながら使い続けていたんだけどね・・・」
ふむ。
「ソニー製の小型パワードモニター。こんなやつ」
ほう。
「『SMS-1P』という」
ほほう。
「当時すでにこの製品をソニーは製造を終えていて、新品で探すと結構なお値段がついていたんだ。なので程度のよさげな中古をネットで探すしか購入方法に選択肢がなかった」
ほう・・・。
「購入したときはもちろん機嫌良く鳴っていたんだけどね」
ふむ。
「なんだか片方のスピーカーの音量レベルが小さくなってきて」
ほう。
「正常な方と比較すると、ボリュームの目盛りで二目盛りくらい大きくしてやらないと音量のバランスがとれなくなってきて」
ふむ。
「それでもしばらく騙し騙し使ってたんだけどね」
ふむふむ。
「でも結局我慢できなくなって、ソニーサービスに正常な方と一緒に持って行って、点検を依頼したんだ」
ほう・・・。
「そこで発覚したことなんだけど、二つのスピーカーで、シリアルナンバーが揃っていないんだ」
・・・?
「本来はペアで売っているので、シリアルは続きになるはずなんですが、と受け付けてくれた人は言うんだよね・・・。やられたと思ったね・・・」
購入時に何かあったのか、な?
「元々の持ち主にそれはどうも訊きにくいしね・・・」
中古で購入すると、そういうところがちょっと怖いな・・・。
「かといって新品も高かったしね・・・。貧乏人の選択肢はそんなもんなんだ・・・」
・・・。
「とにかく、そのまま点検に出したんだけど、数日してソニーサービスから、『お伺いしていた症状が出ません』と連絡があって、そのまま引き取り事となってしまった」
あれ?
「自宅で使うと症状は改善されていない。なぜ?なぜ症状が出なかった?」
さあ・・・?
「単なるガリ?それが多分二年くらい前のことだ。そのまままた騙し騙し使用を続けていた」
ふむ。
「で、先日電源を入れたら、件のスピーカーから音が全く出ない!」
あら!
「PCで使用しているので、まずPCの設定を疑った。続いてサウンドデバイス(EDIROL UA-101)を疑った。そのドライバーも疑ってみた。どれも正常だ。さらにケーブル(もちろんバランス)も疑ってみたが、左右を入れ替えても鳴る。問題なし。一応プラグまで磨いてしまった(意外にプラグの接触は重要)」
ふむ・・・。
「どれも問題ない。どうやら本格的にスピーカーがダメになったらしい?とにかく何か信号を送り続けようと思い、CDを流し続け、ボリュームつまみをいじくり回してみた。単純にガリで、これで改善すれば御の字だと思ったんだ」
ふむ。
「二、三分いじくり回し続けていると、かすかに小さな音で音楽が聞こえだした。さらに続けているとかなりレベルが下がった状態であったが、何とか鳴りだした!」
おお!
「一度音楽を止めて、ボリュームつまみを最大まで上げてみた。『ザァー』といういかにもS/Nの悪そうなノイズが聞こえてくる。正常な方のモニターは、無音状態で最大までボリュームつまみを上げてみても、ノイズは全くしない」
・・・ふうむ。
「そのうち、スピーカーから、『ジリジリ、ジリジリ』という小さなノイズが聞こえだした。デジタル的なものかと思ってサウンドデバイスの電源を切ってみたが、それでも『ジリ、ジリジリ・・』とノイズが出る。これでは使い物にならない」
ふーむ。
「電源を入れ直してみたり、プラグを揺すってみたりしたんだけどね。解消されない・・・。で、どうもその音は、PCのハードディスクがアクセスをする『ちりちり・・』という音に同期をして鳴っているらしい。PCと共有しているものは?電源くらいしかない・・・。なので今度は電源的なものを疑ってみたけど、どう考えても左右のスピーカーで同じ電源タップからパワーを取っていたんで、電源でもないし・・・」
ふむ・・・。
「モニターで、ノイズが乗るという事は、もはや使い物にならないというわけで・・・」
・・・お亡くなりか・・。
「本気でFOSTEX辺りで手頃なものはないかと探しかけたけど、一縷の望みをかけて、昨日再びソニーサービスに持って行った」
ほう・・・。
「細々とした症状を説明して、引き取ってもらったが、問題は、また“異常なし”と言われて突き返されてきた場合だ・・・」
また工場では症状が出ず、持ち帰るとダメになるパターンが目に見えるな・・・。
「ある意味、修理自体は簡単なんだよね。中のアンプ部分をごっそり新しいものに交換すればいいわけだから。むしろ中途半端に検査するんじゃなくて、そうしてもらいたい気持ちが大きい。もちろん修理費は高くなってしまうだろうけど・・・」
うーん・・・。
「フルレンジで、しかも小型モニターなんで、高音も低音も薄い。音質をいじくってチューニングしてやらないといけない。その上指向性がものすごく狭くて(まあ、モニターにはありがちなこと)、サービスレンジを外れると、音質どころかボリューム的なものまで分からなくなってしまう。なかなかに使いこなしにくいやつではあったが、長年こいつでモニタリングしていたので、結構愛着もあったり。というか、そこそこの性能の新品を買う余裕が金銭的にないってのも大きいな・・・」
・・・結局貧乏が悪いのか・・・。
「金があれば確実にモニターはGENELECになってるね」
・・・“愛着”とかって単語が星空の向こうへ消えていったな・・・。
「まあ、十日前後かかるらしいので、しばらくはソニーからの連絡待ちだな」
キミの人としての薄さは計り知れないものがあるな・・・。
まあ、吉報を待とう。安く上がればいいがな。
今回はここで終わる。