Cafe Ligia-exotica / 純喫茶 船虫

よしなしごとを。読書とか映画とか観劇と港の街の話しとか

読書感想文 『石の猿 (上・下)』 ジェフリー・ディーヴァー / 池田真紀子 訳 を読んだ

 いらっしゃいませ。


 なんだか周りはみんな花粉症でウガウガ言っている方が多いんですがね・・・。


・・・ええ。今のところ花粉症の兆候はないですね・・・。ものすごくうらやましがられますね。




 過日彼は、ジェフリー・ディーヴァー氏の書いたサスペンス小説、『石の猿(上・下)』を読了したらしい。今回はそれについての感想とかをウガウガと書いてみたいそうだ。

翻訳物であったわけであるが、どうであったかね。





「これはなかなか面白かったですね。エンターテインメントとして、しっかり作り込まれてます」





ほう・・・。





「推理ものというよりは、アクション・サスペンスです。ハラハラドキドキです」







ふむ。

では例によって内容に少し触れてみるかね。もちろんネタバレ注意報発令ということで。





「元・凄腕の鑑識課員であった、リンカーン・ライムは、現役時代の鑑識時の事故によって、四肢が麻痺してしまっており、現在は電動車いすでの生活を行わざるを得なくなってしまっている。しかし頭脳は現役時を上回るほどに冴えていた・・・。鑑識課の仕事を辞したライムは、犯罪学者として警察関係に顧問として捜査に関わることになっていた。

 そんな彼の元に、FBIと移民局から捜査に協力して欲しいとの依頼があった。中国からの密入国者を斡旋する組織、“蛇頭”の大物を捜査していたが、後一歩のところで取り逃がし、数少ない証拠を残して行方不明であるというのだ。

 ライムはその少ない証拠物件から、“蛇頭”の大物、通称“ゴースト”がアメリカに向かって今まさに密入国者を乗せた船で移動しているということを突き止める。アメリカ沿岸でその船を確保しようとするが、“ゴースト”は船を爆薬で密入国者ごと沈没させてしまい、自らはアメリカ国内に潜伏してしまう。


 多くの殺人や密入国者の斡旋などをしてきた、なかなか正体のつかめなかった“ゴースト(鬼)”。ライムは、FBIの捜査官や、公私ともに親密な女性鑑識官アメリア・サックスなどと共に、“ゴースト”の追跡を開始するが、チャイナ・タウンに潜伏した“ゴースト”をなかなかとらえることが出来ない。“ゴースト”は生き残った密入国者を目撃者として次々殺していく・・・」





おお、なんだか映画っぽい。





「すっかりハリウッド映画です」






うむ。






「というか、ある意味、もろに“ハリウッド”なんですがね」






ほう。





「というのは、巻末の解説を読むまで分からなかったんだけど、この作品は、“リンカーン・ライム・シリーズ”の4作目で、シリーズ第一作の『ボーン・コレクター』は、しっかりハリウッドでサスペンス映画化されているというのだ」






・・・シリーズ物の四作目をいきなり読んで、違和感はなかったのかね。






「・・・特に違和感は感じなかったですね。シリーズの各巻は物語としてしっかり独立して書かれているようです。この作品を単独で読んでも違和感なく充分に楽しめましたね」





ふむ。






「読むと、かなりビジュアルがしっかりと脳内で再生されますね。とても映画的」






ほう。





「ヒロイン、アメリア・サックスが運転する黄色いカマロだとか、嵐の海だとか、雑多な感じのチャイナ・タウンであるとか、風景や人物、小道具なんかの描写が良いです。色々な現場証拠の記述が出てくるので、そういった小道具的な物がしっかり描かれているのは好感が持てますね」






ほほう。






「それにこういったエンターテインメント作品に必要である、テンポの良さもばっちりでした。次々にピンチやチャンスがやってきて、読むものを飽きさせない造り」






ほう。






「ただ、最初がちょっと取っつきにくかった」






ほう・・・。





「中国人密入国者を多数積んだ船ということで、中国系の名前がわちゃわちゃ出てくる。なんだかわけが分からない状態に陥ってしまった。船の船長も、密入国者達も、メインの捜査対象も、全て中国系。当たり前だけど。かなりごちゃごちゃになってしまった」






それは、読み手に理解力が足りないからだろう。






「まあ、そうなんだけどね。さらに捜査する側もそこそこな人数の登場人物がいて、その中の何人か(二人だったか?)は中国系だったりする。ちょっとゴチャッとしてしまったけど、勢いで読んでしまう方が良いようだ。ちょっとずつ登場人物減っていくし」





・・・。






「主人公のリンカーン・ライムはかなりな偏屈ものというか人格破綻者というか・・・。口を開けば毒舌と嫌みとイライラばっかりのなかなかに扱いにくそうな人。きっと友達は少ない」






そんな・・・。






「知り合いにいたら嫌だけど、物語の登場人物としてはなかなか魅力的。このくらいの分かりやすい個性は、こういったエンタメ小説には必要だと思う」





性格設定がはっきりしているほうが物語にはメリハリがつくよな。





「あと、ものすごく分かりやすい伏線が張ってあるなと思ったら、その伏線をしっかりとひっくり返してくるし、結構などんでん返しもあったり。なかなかにツボを心得ている感じ。読み物として面白い」






ほほう。






「まあ、お約束もやってくれる。やはり良いヤツは死にキャラ」






それは言っちゃ駄目だーっ!!






「シリーズの最初から読んでいると、面白さはさらにますかも知れないね」





なるほど・・・。

今回は結構褒めておるな。どうかね、この作品はお勧め出来る作品かね。






「通勤のお供に、主婦の昼下がりに、通学する大学生さんに、それぞれお勧めです。ただ、ちょっと男目線であるので、女性の描き方に不満を覚える女性層が居るかも知れません」





分かりやすいエンターテインメントも、たまには良いものということだな。

今回はこの辺りで終わる。