過日の五月八日に、『新・オイディプス』という芝居のバラシと打ち上げに行っていたんだけど、打ち上げの時、ギター演奏担当の松本誉臣氏と、“影”役で出演していた藤沢俊一郎氏と軽くジャム・セッションをしてみた。
松本氏がアコースティックの12弦ギター、藤沢氏が6弦のアコースティック・ギター、それにカホンとぼろぼろのスネア(ほとんどスナッピーがきかない)、12インチのクラッシュでジャムに参加。
藤沢氏は適当にコードをストロークでならす。松本氏はそれにインプロビゼーションのアドリブ・ソロ的メロディーをつける。それに何とはなしにカホンでビートを刻んで付けていく・・・。
何となくノリで弾き始めた物がかたちになっていく。
決まり事は適当なコード進行のみ。ジャムの『お約束』はもちろん各人の頭の中にあり、自然にそのお約束から外れてしまわないようにジャムられる。
ものすごく適当に合わせているだけでテンションが上がる。
舞台監督の村上浩氏がものすごく適当なメロディーで歌を歌い始める。それに併せてまたジャムる。気持ちいい。なんだろう、とても歌心のある歌い方。
曲のスタートも、エンディングも、音楽の『お約束』を心得ている者同士のジャムなので、放って置いても適当に決まる。
ちょっと学生の頃を思い出す。ジャムの中から曲達は生まれる。
EG『ちょっと、こんなリフを考えたんだけど』
KEY『じゃあ、ちょっとコード進行考えてみよう・・・』
EB『じゃあ、その進行で。最初はとりあえずルートだけで良いな?』
DR『・・・ちょっとゆっくり目で。とりあえず8つで刻むから。おかずはとりあえず適当で行くな』
VO『・・・じゃあ、適当にやってみて。聴きながら、かたちになるかどうか歌メロ考えるから・・・』
たったこれだけの会話で、延々20分くらい適当にジャムる。『お約束』と『共通言語』は各人の頭の中にあり、何となく曲っぽい構成に固まっていく。
後は心のままに・・・。
ものすごく適当な、でもちゃんと構成された、気持ちの良いタイミングでEGがソロを弾き始める。もちろんアドリブ。このときは完全なるインプロビゼーション(曲が完成されるにつれて、ある程度ソロの構成も固まる)。
延々とソロを弾き続ける。気持ちよさそうだ。
適当なポイントでKEYに目で合図を送り、ソロを渡す。歌メロを捜すかのように、ソロを弾く。
続いてEBに目配せをするが、EBは首を横に振る。・・・どうやらまだこのリフトコード進行がしっくりこないようだ。
バンドの目がDRに向く。適当にエンディングにもって行きたいのか・・・。いや、ここは実験的に曲のテンポを思いっきり上げてみよう。ちょっと違った物が浮かび上がってくるかも知れない。バンドを引っ張るようにBPMをぐんぐん上げていく。ミドルテンポのハードロックだった物が、かなりにスピードロックに。同じコード、同じリフでも、速さが変わればまた違った姿が現れる。
EGがにやりと笑いながら、またソロを弾き始める。
バンドのメンバー全員が、『そのソロ、“ハイウェイ・スター”じゃんか(笑)』という目配せをし合いながら、何となく“曲”はエンディングをむかえる・・・。
ここまでのやりとりは恐らく“世界共通言語”。どこの国に行っても、どんな人が集まっても、『目配せ』と『経験』と『お約束』である程度の“楽しい”コミュニケーションを図ることが出来るはずだ。
音楽の『挨拶』。
音楽で『握手』。
セッションというのは本当に面白い物だ。