Cafe Ligia-exotica / 純喫茶 船虫

よしなしごとを。読書とか映画とか観劇と港の街の話しとか

ちょっと昔の話

 いらっしゃいませ。


 はい!回れ右!

お帰りはそちらです。





 彼は特に書くことがないので昔話でもしてお茶を濁そうという魂胆らしい。情けない。





「こちらに来てから日常生活の基本は職場とアパートの往復だけであるし、休日はひたすら引きこもっているか常備食(主にカレー。というか、常にカレー)のストックを作っているかしかないので、どうも書くことがない」





ほう。





「しかもどうも生活することに追われているようで、読書量もがっつり減っている。そしてこの辺りにはサブ・カル的な話題のものが存在しない。車で高速に乗っていかねば映画館にたどり着けないし、面白そうな芝居なぞ論外。正直なところ広大な自然にも、リンゴにも田んぼにも祭りにもそういった地方文化には何一つ興味が持てないのでそれを書く気にもならないし」





ふむ・・・。





「まあ、もう少し余裕が出てくれば読書感想文なんかも書くことが出来るかも知れません。積ん読状態の本はまだまだあるので・・・。あ、一応今サリンジャーなんかを読みかけなんですけどね・・・」





ほう。
まあ、書けるようになれば書けばいい。

で、今回は昔話という事だが。







「・・・かなり昔の話しなんだけど、二度ほど金縛りにあったことがあって」






ほう?
キミは霊感的なものが強いとかっていうタイプなのかね。








「・・・多分霊感とかってものは全くないと思う。だから、その金縛りは数少ないオカルト的体験だね。因みに霊感なんかはないけど、人並みにホラーとかお化けとかは怖い。人並みに」





ふむ。






「・・・夜、眠っていたら不意に目が覚めたんだ。息苦しい。息を吸おうにも思うように吸うことが出来ない。苦しい。まるで胸をぐっと押さえられて息を吸おうにも肺が膨らまない感覚というか」





おお。





「顔、頭、胸、背中、ありとあらゆる部分の汗腺が開いて汗がだらだらと流れてくる・・・!」





それっぽい!それっぽい!





「せんべい布団に寝ているはずなのに、その布団の中にずぶずぶと沈み込んでいく感覚。どこまでもどこまでも沈んでいく。破れたウォーターベッドに埋没していくかのような感覚・・・。沈んでいく沈んでいく・・・」





おおお。






「・・・もしかしてこれが金縛りというやつか?なんか超自然的なやつにナニされてアレな状態だからこんな感覚・・・?みたいなことを考えるとものすごい恐怖に襲われる。とにかく大きく息がしたい。苦しい」





スーパー・ナチュラル!スーパー・ナチュラル!




「こんな時はどうしたらいい?お経とか唱えるのが良いのか?とか思ってうろ覚えの般若心経を頭の中で唱えようと思ったら、本当にうろ覚えで出だしの『カンジーザイボサツ、ギョージンハンニャーハラミタジー』くらいでそこから先が思い出せない。これでは効果がないんのではとか思ってさらにあせる」




・・・お馬鹿な。






「ものすごい恐怖と焦りでどうしたらいいか分からない。その割にはお経とか唱えても仏教の教義では霊とかは否定されているし、自己の悟りが仏教の本分であるし、なんだかアンノウンな物には効果が無いじゃないかなんて考えてみたり」







なんだそりゃ。






「でも他に対処の方法が分からないので、結局ひたすら『ナムアミダブツ、ナヌアミダブツ・・・』と頭の中で唱え続けるしかなかった」






ほう。






「知識では、これはいわゆる金縛りという状態で、脳は起きているけれども身体は眠っている状態のために起こる状態で、みたいなことは分かっているのだけれども、単に動かないだけではない感覚に突然信仰とかにすがってしまう。自分でいうのも何だが、普段は本当に無信心なのに」





まあ、そんなもんだろう。





「念仏らしきものを唱えながらひたすら待っていると、いつの間にか目覚まし時計が鳴る音が。どうやらわちゃわちゃやっている間に眠っていたらしい。朝になっていた」





へえ。





「たくさんの寝汗をかいていたらしい。背中の筋肉が妙にこわばっている感じがする。しかし、何事もなかったかのような朝」






・・・ほう。

で?






「時間になったからバイトに行った。それだけ」





・・・。
それだけか。





「まあ、また何か書けそうなことがあったら記事にします」






・・・それだけだったんだ・・・。

まあ、良い。

次はまっとうな記事を書くのだぞ。

今回はこの辺りで終わる。