Cafe Ligia-exotica / 純喫茶 船虫

よしなしごとを。読書とか映画とか観劇と港の街の話しとか

短い 読書感想文 『マルドゥック・スクランブル [完全版] 圧縮・燃焼・排気』 冲方丁(うぶかた とう) を一気に読んだ

マルドゥック・スクランブル 圧縮 [完全版]』
マルドゥック・スクランブル 燃焼 [完全版]』
マルドゥック・スクランブル 排気 [完全版]』

 ネタバレ注意で・・・。


 今までこの作品のことはあまり知らなかったけど、作者の冲方丁氏が俄然注目されている昨今、やはり有名どころは読んでおこうと思い、軽い気持ちで購入。


 ・・・なるほど、こんな感じであったのか・・・。


 分類/世界観としては、SF・サイバーパンクということになるのかな?

 SFだけど、がっちり理論ずくで来るのではなく、そのエンターテインメント性で読者を“世界”に引き込む。エンタメものとしてはかなり良質。



 主人公の少女は殺人事件に巻き込まれて瀕死の重傷を負い、皮膚のほとんどを人工の金属製の皮膚に置き換えられてしまう。その皮膚は、あらゆる電子機器を“感覚”し、干渉・制御できるちからをもっていた・・・。

 死の淵からよみがえった少女の再生と復讐の物語で、復讐劇らしく派手なドンパチとかもあるんだけれど、まさかもっとも盛り上がるシーンが、その能力をフルに使ってのカジノでのブラック・ジャック勝負だとは思いも寄らなかった・・。

 このカジノのシーンは本当に圧巻。読んでいると作者の本気が伝わる。


 ポーカーとかの勝負ではなく、ブラック・ジャックであることは必然。

 この圧巻のシーンがあったればこそ、最後の戦闘にも説得力が出てくる。



 個人的に、言葉遊びの部分で読むペースが落ちてしまったので、もう少し少なくてもとか思うんだけど、この“言葉遊び”はこの作品の大切な世界観なので、必要不可欠でもある・・・。おそらく作者は意図してシーンの進行のスピードをコントロールしてたのかな、なんて思ってみたり・・・。



 この作品が良質のエンタメものであることは間違いないので、(もちろん好き嫌いはあるだろうが)なかなかにお薦めである。


 ・・・本にチラシが挟まっていて、アニメ映画版の広告であったのであるが・・・(既にDVD化されている)。
 まずどうも画の感じが脳内で再生されていたものと食い違ってしまう・・・。文庫版カバーイラストの寺田克也氏のイメージがすっぽりはまってしまったというか・・・。
 あと、ネズミのウフコックの声が、八嶋智人氏というのも脳内で再生されていたものと大きく食い違っており・・・。
 うーん観るべきか、観ないべきか・・・。





蛇足

巻末の参考文献の欄に、“『無敗の手順 雀鬼桜井章一の究極奥義』 桜井章一 竹書房”というのがあって、個人的に面白かった。