Cafe Ligia-exotica / 純喫茶 船虫

よしなしごとを。読書とか映画とか観劇と港の街の話しとか

短い 読書感想文 『舟を編む』 三浦しをん 著 を読んだ 

 


舟を編む

久しぶりにハードカバーを買ってみた。本屋大賞受賞の文字に見事に釣られる。



相変わらずのネタバレ注意で。



 作品としては短めな感じ。取り扱っているテーマのことを思うと、もっと大量の情報量で迫ってくるのかと思ったら、さらっとこなせる分量であった。もちろん著者の読みやすい表現の仕方や分かり易いキャラ設定などがその読みやすさに一役買っているのはいうまでもないが。



 読み進めてすぐに、主人公の馬締(まじめ)くんが、意中の美女(香具矢さん)と両思いになってしまう。“え?お約束的には、苦労が報われたラストで恋も成就するというのがこういうやつのパターンでないの?”と思ってしまったが、これは中盤で場面転換してからの状態で合点がいく。

 扱うものがものだけに、数ヶ月や数年のスパンでは話は終わらないのである。その長い物語のあいだ、馬締くんを支えてきたであろう人物を早めに登場させるというのは納得させられてしまった。



 読んでいると、ずっと物語の温度が上がりきらない感じがしていた。常に80℃位というか・・・。

 読み手はどこかで100℃に達する熱さを求めてしまうに違いない。今回読んでいてもそんな感じだった。この温度はラストまでそれほど上がらない。85℃くらいというか・・・。


 なのに、ラストまで読み終わるとかなりグッと来る!しっかりとこみ上げてくるものがある!


 上手いなあ、三浦しをん氏・・・。

氏の作品は、『風が強く吹いている』と『まほろ駅前多田便利軒』しか読んだことがない。まさにニワカ。まさにミーハー。


 (ミーハーで大変申し訳ないが)読んだ作品はどれも面白かった。個人的には今作はちょっと狙いすぎ?な部分も感じられたが、面白いものは面白い。温度を上げず、淡々と、そして物語は(馬締くんが出版社を定年退職した後も)ずっとずっと続いていく・・・。


 この淡々としたところにおもしろみが感じられない人には向かないかな?そういう意味では読み手を選ぶ本と言えなくもないが・・・(あれ?また日本語が変?)。


 でも読みやすく、面白いので。

 皆さん、さらっとどうぞ。