Cafe Ligia-exotica / 純喫茶 船虫

よしなしごとを。読書とか映画とか観劇と港の街の話しとか

読書感想文 『尻啖え孫市 上・下(新装版)』 司馬遼太郎 著 読んだ

 いらっしゃいませ。


 ・・・ああ、その話ですか。

いやあ、外タレレポートと云えば、個人的にはやっぱり「服部まこ」なわけですよ。

そこん所はゆずれない線ですねえ・・・。・・・いやいやいや・・・。





 彼が久しぶりに読んだ本の感想を書くという。


何か。




司馬遼太郎氏の『尻啖え孫市』(しりくらえまごいち)という本を読んだので、その感想とかを書こうかと」



ほう。



「尻啖え孫市」





「これは面白かった!“伝説の”戦国武将、雑賀孫市を主人公にした読み物なんだけど」





ほほう。





「いやあ、なんというかなあ、講談師が舞台上で丁々発止と物語を語るような感じと云えばいいのか。とにかくものすごい勢いで物語が脳内に流れ込んでくる」




おお、誉めているな。




「読書家の方が聞いたら馬鹿にされてしまうかも知れないので大きな声では言えませんが・・・。どうやら、司馬遼太郎作品、これでやっと二作目ですな、読んだの」





・・・ほう。






「ずいぶん昔に『項羽と劉邦』を読んで、どうも今一つであったような記憶があったので、その後司馬作品を読むことはなかった。多分その当時、こちらが“読み手”としてあまりに稚拙であったからだと思われるのだが・・・。久しぶりの司馬作品が、この『尻啖え孫市』で良かったのかどうなのか。『竜馬がゆく』とか『国盗り物語』とかのほうが良かったのか・・・。まあ、とにかく楽しめましたね」






へえ。
で、前置きはこのくらいにして、簡単にないように触れてみるかね。まあ、もちろんネタバレ注意報発令ということで。





「時は戦国中期。現在の和歌山県近辺の地侍“雑賀(さいか)衆”の嫡男、雑賀孫市の物語。鉄砲と用兵の天才。紀州地侍の若太夫が、一向宗門徒の侍大将として織田軍と戦う。豪快無比な好漢、孫市の伝説」





なんだか短くまとめてきたな。






「“雑賀”“織田”“一向宗”“石山本願寺”といったキーワードが並んだ瞬間に、歴史的物語は本願寺の衰退にしか繋がらないわけで。ストーリーの解説的にはこんなものかなと。まあ、別に一向宗浄土真宗)自体がすべて織田に駆逐されたわけでもないし」






ふむ・・・。






「この読み物の面白さは、やはり主人公・雑賀孫市がものすごく人間味豊かに、かつかっこよく描かれているところにある。感覚としては、『水滸伝』の好漢達のような感じかな?強く、女色を好み、酒をくらい、我が道を行く」






・・・。





「話は少し横道に逸れてしまうが、この本を読むまでの雑賀孫市に関しての知識は、“紀州の鈴木氏の鈴木重秀の別名らしい”“雑賀は鉄砲集団”“孫市という名は世襲らしい?”“どうも一向宗らしい”みたいな・・・(『信長の野望』シリーズをプレイして得た知識)」





・・・半端な。





「諸説あるけれど、今回読んだ『尻啖え孫市』では、主人公の孫市は、本願寺開城後に姿を消している。また、関ヶ原で西軍に参加していてその後には徳川に仕官しているなんて説もあるらしい。伝説的快男児だけあって、その辺りの所もミステリアス」





伝説なのだな。





「物語は、色好みの戦の天才、快男児雑賀孫市を縦糸に、戦国初期から勢力を拡大し続けた“一向宗浄土真宗)”を横糸にして、孫市はいかにして“風雲児”信長を退け続けたかがワクワクドキドキで進んでいく」






ほう。






「鉄砲は威力は凄いが、デリケートで射撃にも装填にも職人的技量を必要とする武器であった。それを戦場で部隊として指揮して行くのは並外れた作戦式能力を持たねばならない。一発撃って終わりではない。間断なく打ち続けられるようにしつらえねば、戦場ではお荷物部隊にしかならなわけで。その名人的技量を持った雑賀衆と、それを見事に指揮する孫市。いやが上にも(あれ?日本語おかしいかな?)盛り上がる。やはり合戦ものはこうでなくては!」





ほほう。






「そして“快男児”孫市と、“天下取り”木下藤吉郎の交わり。この辺りも戦国物が好きなものにはたまらない感じ」






へえ。






「鈴木氏が紀州地侍なので、物語の部隊が畿内であることが多い。やはり関西人としてはおなじみの地名がたくさん出てくるのでそれがまた面白い」





ほう。





「摂津の花隈城とかまでちらっと出てくるので、地元民としてはかなりうれしい。ちょっと感想から逸れてしまったけれど」(補足:花隈城・城跡は、現在地下は駐車場、上は公園になってます。石垣も当時のものではないようですね)






なるほど。






「当時の人、風俗なんかが活き活きと描かれているのも面白い」





ふむ。





「あと、司馬作品でおなじみの、物語の合間合間に入る歴史逸話がものすごく面白い。これが講釈氏が物語っている感じで、遠い過去をかなり身近なものにしてくれる。これ、『項羽と劉邦』を読んでるときには煩わしかったんだけど、この『尻啖え孫市』では逆に話にのめり込める」





へえ。





「例えば、“半井”さんの名前の由来とか出てくる。気象予報士半井小絵さんでおなじみの(?)名前だけど、都のお公家さんのお医者さんの家計らしい。半井小絵さんも関西の人なので(伊丹の人だったと記憶している)、もしかしてそこへ行き着いたりするのかななんて思ってみたり」





・・・へえ。







「脱線ついでに、この本で始めて自分の姓に含まれている文字を活字で拝むことが出来た。すごいすごい」(追記:どうやら観音様の名前の一つから来ているらしい。ここではもちろん書けませんが)







・・・。







「なんだかとりとめない文章になってるけれど、久しぶりの司馬作品、面白かったです!」






確かにとりとめないな。






「司馬作品はいつかまた読むことと思います。次は何が良いか・・・。やはり定番は『竜馬がゆく』とかかなあ・・・」





そろそろまるっとまとめてみないか。
この本はお薦めかね。







「お薦めですね。通勤通学のお供に、戦国時代が好きな人に。奥様の午後の一時にいい男の話、いかがですか?あと、畿内に住んでいる方は、さらに気持ちよく読めると思いますよ」





なるほど。お薦めであるか。

久しぶりの長文で、文章が本当にとりとめがないようだな。

精進せよ、小人よ!




追記
私信:MT嬢へ。近いうちに送ります。返品の必要はありませんが、面白いので是非こいつから読んで下さい。