Cafe Ligia-exotica / 純喫茶 船虫

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短い 読書感想文 『アンブロークンアロー 戦闘妖精・雪風』 神林長平 著 を読んだ


アンブロークンアロー 戦闘妖精・雪風



 『戦闘妖精・雪風』シリーズは、長い年月を経て、物語を変容させていっている。


 主人公・深井零の属するフェアリィ軍の“敵”である“ジャム”は、これまでは『コミュニケーションをとることが難しい、地球人類からは理解することが不可能な異星体』というニュアンスであったが、今作ではもうほとんど対処できない物体ではないのか?と読者に思わせる存在にまで昇華(?)させられている。

 人間には“観測”することすら困難な、ほとんど量子学的な(?)異星体。その上、“多元宇宙”や“並行世界”的な世界観がガンガン広がっていく。



 以前に読んだことのあるマイケル・ムアコックヒロイック・ファンタジー(?)の「エターナル・チャンピオン」のシリーズ(『エルリック・サーガ』とかね)で、さんざん並行世界の描写を観てきたけれど、それでも多くの現象が並列に描かれるとかなり面食らってしまう。『神』は『人』であり、『人』は『ジャム(異星体)』であり、『彼』は『自分』であり、『自分』は『神』でもある・・・。


 物語の進行を難解にしているのは、並行世界には、「正常な時間軸の概念がもはや存在しない」という“概念”。過去も、現在も、未来も、もっと深遠な“神の視点”からでは、もはや無いに等しいのだ。





 そして戦闘妖精は、ジャムが地球に降り立つのを“阻止”し、地球という“存在”を“定義づける”・・・。



 少々難解であるし、シリーズの1巻目2巻目とも少し趣は異なるけれども、面白いことには変わりない。



 もうほとんど“神”のような存在になった異星体・ジャムに、果たして“人”は太刀打ちできるのだろうか・・・。