Cafe Ligia-exotica / 純喫茶 船虫

よしなしごとを。読書とか映画とか観劇と港の街の話しとか

記憶 『11ぴきのねこ』

 子供の頃の話しである。どこでどんな話しがあってそうなったのかは今では全く記憶にないが、子供向けのミュージカルを親に強制的に連れて行かれたことがあって。しかも短いスパンの間に2本。そのうちの一本はもしかしたら学校公演とかであったかも知れない。今となっては記憶の彼方だ。

 当時とんでもなくシニカルな子供だったので、子供向けのミュージカルなんて考えただけでも嫌であった。子供のくせに『子供向けのミュージカルなんて、子供だましだ』と思っていたのだ。全くひねくれた子供であった。

 その時に観た演目が『11ぴきのねこ』であった。腹ぺこな猫たちが、幻の巨大魚を捕らえて、腹ぺこをみ満たす・・・。そんなような内容であったと記憶している。まあ、ハッピーエンドな話しであった。ひねくれ子供であったので、芝居の最中は苦痛でしか無く、たいした印象も持たずに終了した。

 そして、期間を空けずに2本目のミュージカルを観ることになったのだが、またしてもタイトルが『11ぴきのねこ』。先日無理矢理観さされた(←変な日本語。陳謝)ばかりではないか。嫌で嫌で仕方が無かったが、結局観に行く羽目になった。


 (ネタバレ失礼)もう、ストーリーは判っている。ワクワクはゼロであった(ただ、今思うとセットもちょっと凝っていたし、役者の歌も前回より上手かったような気がする)。
そしてエンディング。ハッピーエンドで終わったこの間観た芝居とは一転、ラストで主人公が殺されてしまう。それまで仲の良かった仲間達に殺されてしまうのだ・・・!
子供心にも衝撃であった。まさかそんな考えさせられるラストになっていたとは・・・。


 この『11ぴきのねこ』、元々の原作が馬場のぼる氏の絵本で、後に演劇用に別な脚本のものが書かれたという事を知ったのは、随分と大人になってからの話しだ。

1本目に観たものが恐らく絵本を元にしたもので、2本目に観たものが演劇用の脚本のものだったのだろう。この演劇用の脚本の作者が井上ひさし氏であった。ひねくれ子供が観た、初めての『大人の童話』であった。



氏がどれだけの作品を世の中に生み出してきたかを知ったのも随分と大人になってからだ・・・。