いらっしゃいませ。
・・・もちろん今日も水なわけですが・・。
水で良いんですか?
いや、水しか勿論ありませんが・・。
水で良いんですか?水で良いんですね?いや、水しかないんですけど・・水で?
・・・はい、蛇口はこちら。
彼は過日、トム・ロブ・スミス氏の『チャイルド44』(上・下)をやっと読了したらしい。今回はそれについての感想とかを書きたいそうだ。少々読み終わるまでに時間がかかっていたようだが、読みにくい感じだったのかね。
「いや、翻訳物にしては比較的読みやすい部類であったと思うよ。今回は少々読む時間がとりづらかったので読み終わるまでに時間がかかってしまった」
ふむ。
では、感想などの前に、お約束的にどんな内容だったか聞いてみようかね。
「ジャンル的には、ミステリーというよりサスペンスといった方がしっくりくるかな?猟奇殺人を題材にしているが、それほどサイコ的な組み立てではない。
スターリン体制下末期のソヴィエト連邦、国家保安省の捜査官レオ・ドミトフは、部下の息子の不審死を事故であるという宣告を告げに行き、部下とその家族を納得させるという少々気の重くなる任務を言い渡される。部下の家族の前で不審死は事故であったと言い切り、任務は完了するが、その任務の間にスパイ容疑で内偵中であった容疑者に逃亡されてしまう。容疑者の拘束には成功するが、その機に乗じた狡猾な部下、ワシーリーの計略に嵌り、レオの妻にスパイ容疑がかけられてしまう。極刑は免れたが、妻共々片田舎の民警へと追放されてしまう。そこで発見された惨殺死体は、かつて彼が事故であると部下の遺族を説得した少年の遺体の状況に酷似していた。そして第2の遺体があらわれる・・。しかし彼は一切の捜査権を持っていない一介の民警(文民警察)でしかないのだ・・・。しかもスパイ容疑をかけられたままで常に監視をつけられ、全くの身動きがとれない状態で・・・」
そこそこまとめてきたな。
「文庫裏の紹介文では全く内容が伝わらないし、かといってだらだら書くとネタバレしそうだしでこんな感じでまとめてみました」
今回はどんな感想を持ったかね。
「この作品は2009年版 海外編の『このミステリーがすごい』第1位になってて」
ふむ。
「『このミス』1位ってのにまた騙されるんじゃないのかって、ちょっと疑ってかかってたんだけど」
『禁断のパンダ』、『ブレイクスルー・トライアル』と、この2作に関してはちょっと『?』な感じだったようだしな。
「この作品は真っ当でした。ちゃんとミステリーしておりましたし、良くできたエンターテインメント作品だと思います」
おお、褒めている。
「もしかしたらネタバレになるようなことも書いてしまうかも知れませんので、未読の方は気をつけて読んでくださいね」
キミも気をつけて書くのだぞ。
「この作品は、ソヴィエト連邦末期に実際に起こった大量猟奇殺人『チカチーロ事件』に着想を得て執筆されている。この事件は、発生から足かけ12年をかけて52人もの少年少女を大量殺害した事件で、今回の作品では時代背景を50年代のスターリン政権時に移し替えて創作している」
実際にあった話なのか・・・。
「小説を読み終わってから、「チカチーロ」でwikipediaで検索して記事を読んでみたんだけど、事件にインスパイアされていると言うより、かなりな部分で事件と共通項がある」
ほう。
「それを書くと小説のネタバレになってしまうので、今回は書かないけど、実際の地名であるとか事件のバックボーンであるとかにかなり多くみられる」
先に調べてしまうと小説のおもしろさが半減してしまうな。
「逆に小説を読んでからモデルとなった事件を調べるとおもしろさが増してきます。この事件に関しては多数の文献が出ているようですが、是非小説を読了してから調べてみることをお薦めします。wikiで調べるだけでもなるほどと思ってしまいました」
「連続殺人もの」であるが、サイコ色は薄いと言っていたが?
「テーマは「殺人者の心の闇」ではなく、「共産党時代のソヴィエト連邦の闇」なので、ある意味サイコ色は薄い。ポイントは、『ソヴィエトは、なぜ44人もの(実際の事件では52人)連続殺人を止めることが出来なかったのか』」
ほう。
「共産主義下での思想と現実の矛盾や政府からの異常な抑圧・・・。大量殺人事件を下敷きに小説ではそういったところの部分に焦点をあてている」
それで時代設定を80年代後期から50年代に移し替えてるわけか。
「スターリン体制下での共産主義政治ほうが、ゴルバチョフ政権時より共産主義的矛盾がはっきりしているからね」
この本は2008年に出版されたわけだけど、ロシアでは発禁なんだそうだね。
「まあ、これだけはっきり文章で共産主義政権は矛盾だらけだなんて書いていると、いくら連邦が崩壊した現在のロシアでも共産党はいやがるだろうね」
なんだか政治的な物語みたいだが。
「勿論立派にサスペンスしてます。基本エンターテインメントなので。難しい事は考えずに読み進められると思いますよ」
発売元のイギリスはもとより、その他の国々でも結構評判が良いらしいな。色々と賞も取ってるようだし。
「映画の版権をリドリー・スコットが買ったらしく、同氏の監督で映画化が決まっているらしい」
映像化されるのか。
そういえばキミはこの小説の主人公が脳内でレオナルド・ディカプリオっぽい人に変換されると以前書いていたが。
「理屈では分かってるんだよ。イタリア系の顔のレオナルド・ディカプリオがロシア人のわけがないって。多分『シャッター・アイランド』のCMがそのまま脳内にへばりついたんだろうな」
映画版の主役はやはりレオナルド・ディカプリオがいいかね?
「いや、・・・多分もっと体のがっしりした、体育会系の・・・。ウクライナ出身ですと言っても通用するような東欧系の顔の人でないと、映像的にはつじつまが合わないし説得力もない。だからディカプリオではないはずだし、なくても全然OK」
『チカチーロ事件』から外れて、おなじ主人公で続編が出ているようだけど、読むかね。
「ちょっと興味深いので、いずれは読むかも知れません。スターリンが死に、時代がフルチショフ体制に変わり、共産党の体制も大きく変わっていく。そんな時代背景の作品らしい」
たまには翻訳物も良かったな。
「半年ぶりくらいかな・・。『エルリック・サーガ』の完結シリーズを読んで以来だから・・・。これからも時々ジャンルを問わず翻訳物も読んでいきたいと思います」
見聞を広めよ!小人よ!
「そして例によって突然の告知タイム!」
彼の知人で風船パフォーマー・『足長のゆ〜じ』が4月16日より役者として舞台に立つというので告知しておこう。
この記事に告知を記載しても宣伝効果は極めて薄いが、彼的には精一杯の協力であるのだ・・・。
因みにこの記事の閲覧状況が、ここ数日で急落しており、宣伝効果の薄さたるや、輪島漆器の上に貼られた金箔よりもまだ薄い事請け合いであるのだが、もしかすると数打てば当たるかも知れぬのだ。この閲覧数急落の数日の間に、香港かのら閲覧の履歴が残っていたことだし・・・。
物事をワールドワイドに考えるという新たな現実逃避法を使って、今日も細々と生きていくのだ・・。
以下告知
『世界平和家族 〜とある家族の家庭の事情(バックボーン)〜』
「ゆ〜じ」が所属するパフォーマンス集団
ISC Player(s)のホームページ
http://www.k4.dion.ne.jp/~isc-hp/
そして公演する劇団、「よろずやポーキーズ」のホームページ
■公演日時
2010年
4 月16日(金) 19:30〜
4 月17日(土) 14:00〜 / 18:00〜
4 月18日(日) 14:00〜
受付開始は、開演の1時間前より
開場は、開演の30分前より
■場所
一心寺シアター倶楽( http://www.isshinji.or.jp/theater/ )
詳細はそれぞれの上記ホームページで見てもらいたい