いらっしゃいませ。
・・・良くこのクソ暑い中をこんなところまで・・・。あれ?
彼は昨今、愛用品の調子が悪くなって大変困っているらしい。
また何か壊れ物かね。
「長年愛用してきたヘッドフォンが壊れてしまいました」
あらあら。
「この子でございます」
ほう。
「定番機種のSONY MDR-CD900STだ」
ふむ。
まさにど定番。テレビなんかで良くアーティストがレコーディングしている場面なんか見ると、かなりの確率でこのヘッドフォンが映り込むな。
「定番なので。日本国内で、というか世界でも、殆どの音楽関係の作品がこのヘッドフォンでモニターされて創られているってのは、ちょっと説得力ないかい?」
なるほど・・。
「前々から、パッドがはずれかけてたりしてたんだけど、そんなのは全然無視できるレベルの老朽化だったんだけどね。パッド自体交換できるし」
ふむ。良くある老朽化だな。
「・・・ところが、今回の壊れ具合はちょっと致命的。R側が聞こえなくなってしまった」
おお、大問題。
「2現場抱えている状態で、長年信用して使っていたモニター・ヘッドフォンが無くなるのは大変困る!」
それはそうだ・・。
「・・・ところで、こういうヘッドフォンを使用していると、さぞかし“良い音”で聴いてるんだろうな、なんて誤解されてしまうんだけど、皆さんが思っている“良い音”とはちょっと概念が違う。そういった“良い音”を本当に望むなら、有名オーディオメーカーの高級ヘッドフォンを購入することをお勧めする。あ、こういった書き方をすると、なら日常使用に耐えない“悪い音”なのかという風に捉えられてしまうけど、そんなわけではなく、かなり“良い音”でもある」
・・・ほう。
「このヘッドフォンについては賛否があって、やたらとこき下ろす人もいるけど、そういった方は多分オーディオ的な“良い音”を求めてどうも違った、という人が多いんじゃないのだろうかと思う」
ふむ。
「個人的にこのヘッドフォンに求めるのは、まずフラットな音質。ヘッドフォンは大抵そのヘッドフォン独特のキャラクター付けされて生まれてくる。その色味が出来るだけ少なく、高音から低音まで強調された部分が少なく、また減衰されてる部分も少ない出来るだけフラットな状態のものが良い・・。音像がしっかりしていて、位相も分かりやすく定位も分かりやすい。そしてそこそこの値段である程度へヴィユースに耐える堅牢性も必要かな」
色々とわがままだな。
「ちょっとテクニカも試してみたけど、音質が好みじゃなかった。テクニカにはテクニカの色があって・・・。個人的にはSONYだな・・・。もちろんSONYにはSONYの色があるんだけど、そっちの方が好みだな・・」
ふむ。
あ、因みに『テクニカ』は『オーディオテクニカ』の略だ。
「後、愛着が残っている理由がこれ」
ふむ・・・?
「本来業務機のこの製品は折りたたみ機構がない。それを折りたたみできるように部品を交換してある。これでかさばらずに持ち運べる。使い勝手も収納も向上。あ、もちろん耐久度は下がるだろうけどね」
・・・これは簡単にできる改造なのかね。
「このヘッドフォンの改造の定番だね。もともと、『MDR-CD900』という民生機があって、それを業務用に調整したのが『MDR-CD900ST』だ。民生機の頃は折りたたみ機構はあったんだ。だからその頃のパーツを入手できれば簡単に交換できるというわけ」
なるほど・・。
「因みに、予め、こういったカスタマイズを施した上で 販売しているお店も密かに存在する。もちろん改造してしまうとメーカーの保証は受けることは出来なくなるけどね・・・ 」
ほう。
「とりあえず近いうちにヘッドフォンを買わねばならない・・・。また出費だ・・・」
今回壊れたヘッドフォンは何年くらい使ったかね。
「10年くらいかな・・・。まあ、そう言う言い方をすれば十分元は取れてるんだけどね」
まあ、次の購入も無駄にはならないだろう。頑張って買うのだぞ。