Cafe Ligia-exotica / 純喫茶 船虫

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短い 読書感想文 『ミレニアム 3 眠れる女と狂卓の騎士』上・下巻 をやっと読んだ




 『ミレニアム 3 眠れる女と狂卓の騎士』上・下巻をやっと読み終えた。今日の昼から下巻を読み始めて、少なくとも7時間くらいかかってやっと読み終えた。自分でも本当に遅読だと思う。映画に行くはずの休養日は一日布団で読書になってしまった。


 簡単な感想とか突っ込みとかを書く。


 例によってネタバレ注意で。




 まず、この“3”は、かなりおもしろい!正直を読むと“1”と“2”は壮大な序章、もしくは壮大な(ミカエル以外の)キャラクター設定書であったという感じがしてしまう!


 事細かく作り込まれたキャラクターと物語が、ここに来て組み上がっていく!


 未読の方は、少々(?)長いが、きっちりと“1”と“2”を読んでいただきたい。



 この“3”に関しては、本当に“エンタメ”である。良い意味で。帯に“ミステリ”なんて言葉が踊っているが、個人的にはミステリ要素は微塵も感じられなかった。ミステリ的なおもしろさより、やはり終盤の裁判シーンでの盛り上がりがこの物語の肝ですな。

 なんだろう、ツーアウト満塁、一打サヨナラのシーンで、本当に代打の仕事人がホームランをかっ飛ばしてくれる爽快感というか・・・。相変わらずのスケコマシ主人公ミカエルは、きっちり監督の仕事をして、ちょっと弱気な仕事人バッター、アニカを投入。みごとにリスベットを勝利投手にするわけで・・・。

 ・・・あれ?ちょっと違うか?まあ、良い。




 なかなかに傑作エンタメで、細かいところなんざスルーしてしまえと言う人もいるだろうが、突っ込みどころは以外に多い。相変わらずやたらと変な性癖の人とか性欲旺盛な人とかが多い。まあ、恋愛の観念とか、貞淑(・・・表現が変だが良い日本語が思い浮かばない。語彙が少なすぎて・・・)の観念とかが違うというのは分かるけれど・・・。スウェーデンでは普通なのかなあ。出会ったらすぐベッドに直行だし、肉体関係を持った後でも、“HAHAHA、彼女とは友達の関係だヨ!尊敬!友情!”とか平然とのたまうし・・・。


 あと気になったのは、最初謎の人物として登場するロナルド・ニーダーマンが中盤以降には単なるでくの坊扱いである。デク。物語が始まって早々(?)に「影の人物」ザラチェンコがくたばってしまうのだが、どうせなら死に役をロナルドにして、ザラチェンコとはもっと頭脳戦とかを展開して欲しかったと思うのだが・・・。


 最終的(というか、裁判戦終了後)に、ロナルドが未だに検挙されていないという状況は残念ながら「美味しいデザートが待ってい」るという期待感は薄い。リスベットに肉弾戦をさせるというのは、どうも無理がある気がするんだな・・・。これは“2”でも思ったけれど。ミリアムやリスベットをやたら戦闘力高めで描いているけれど、それはちょっとリアリティが薄すぎる気が・・・。



 あと、頭脳戦的なことで思ったのが、公安警察の敵役の人達!作戦がどれもぬるすぎる!ヘボい!弱すぎ!一介のジャーナリストに裏をかかれすぎ!作戦としてイケていたのは正直グルベリの自決くらい。そういえばグルベリは長々と昏睡状態で生きていたが、そのまま普通に死んじゃうな・・・。何かの伏線だと思っていたんだけれど・・・。
 一般市民の“ヒーロー・ジャーナリスト”のミカエルの妨害工作がことごとく図に当たってしまうのは爽快でもあるが敵役として弱すぎる。もうちょっと元・スパイ集団らしい活躍があっても良いんじゃないのとか思ったり。





 なんだか細かく突っ込んではいるけれど、この作品自体は上物のエンタメなんで、こんな細かい突っ込みを入れずに読み進められると思います。お薦めです!




 残念なのは・・・、



 物語と云うより、作者が既にお亡くなりになっていること・・・。第四部は既にある程度出来ており、しかも作者の構想では第十部まであったのではないかなんて云われているけれど・・・。果たしてその第四部というのが世に出るのかどうか・・・(遺産相続問題だとか、版権の問題だとかで厳しいようだ・・・)。


 これにより、第一部からしっかり描きこまれている巨大なる伏線、“妹”の絡む物語が語られず終いになってしまった・・・。これは本当に残念だ・・・。




 細々と書いたけれど、細々読まずに一気読みするのが良いでしょう!特に“3”に関しては!お薦めします(二回目)!



 然しながら・・・、個人的に、やはりミカエルは親しくなれないタイプだと思う・・・。