Cafe Ligia-exotica / 純喫茶 船虫

よしなしごとを。読書とか映画とか観劇と港の街の話しとか

読書感想文 『犬はどこだ』 米澤穂信 を読んだ

 いらっしゃいませ。



 人混みや混み合っているお店なんかは、風邪やインフルエンザをうつされる可能性がありますからね。要注意です。


・・・うちですか?

・・・・・・


・・・ええ、確かに混み合ってはいませんね・・・。





 彼は過日、米沢穂信氏の初期の小説、『犬はどこだ』を読了したらしい。今回はそれについての感想やなんかを、おずおずと書いてみたいそうだ。


どうであったかね。






「うーん、初期の作品ということで、色々あるかとは思いますがね。面白いっちゃあ面白かったんですがね・・・。まあ、突っ込むべきところもあり・・・。しかしそれを突っ込むと物語が成立しないななんてことを考えてみたり・・・」






・・・ふうむ。

ジャンル的には何になるかね。







「ミステリーですね。主人公が新米探偵なので、探偵ものに分類出来るでしょう」







ふむ。
では例によって、内容とかに触れてみるかね。もちろんネタバレ注意報発令ということで。







「紺屋長一郎(こうや ちょういちろう)は、東京で銀行員をしていたが、重度のアトピー性皮膚炎を患い、療養のため仕事を辞し、故郷へ帰ってくる。半年間の気の抜けた療養生活の後、何か仕事を始めねばと思い、犬探し専門の調査所を始めることにした。いざ電話線を引き、開店を決めたその日に、知人の紹介で来たという、客第一号が現れる。しかしながらそれは犬探しの依頼ではなく、東京で失踪した孫娘を捜して欲しいという、人捜しの依頼であった。戸惑いながらも仕事を引き受けることにした。

 次の日、事務所には高校の後輩、半田平吉(はんだ へいきち)がやはり知人に探偵事務所を開いたという話を聞きつけて現れる。探偵にあこがれる半田(通称ハンペー)は、押しかけ従業員として事務所で働くことになる。

 直後に第二の客が現れる。今度こそ犬探しかと思えば、村に残る古文書を解読してもらいたいという内容。これも仕事として引き受けてしまうが、早速ハンペーに古文書解読の仕事を言いつけて、自分は人捜しの仕事に専念しようとする。

しかしながらこの二つの仕事は微妙にリンクをしていたのだ・・・」





まあ、犬探しを考えていたら、人捜しの仕事が来て悪戦苦闘という感じか。






「結構冷静な主人公で、あまり悪戦苦闘という感じにはならない」






・・・・ふむ。






「人捜しが実は殺人事件に発展しそうになり、二つの捜索が微妙にリンクして、というのはサスペンスの常套。作者はあえて常套を踏んでくる」






ふむ。





「なので、後半のある部分で、犯人は二択に絞られてしまう(もちろん、“その時点までで登場していた人物”という鉄板の約束事を踏まえた状態で)」






ほう・・・。

早くに犯人が分かってしまうのはアレな感じではないか?






「まあ、一応プチどんでん返しがあるので、それがあって初めて成立した感じですかね。そのプチどんでん返しも、よく読めば分かりやすい伏線をしっかり張っていてくれているので、ものすごいどんでん返しではないです。まあ、それでも初期作品としては良くできた感じではないでしょうか」







・・・ふむ。

キミが突っ込みたいのは、その伏線とかオチとかってところかね。






「・・・犯人が見つかるまでの捜査段階のところですね。序盤から後半まで。長い間です」






ほう・・・。


また独りよがりな突っ込みを入れようとしているわけだな。






「主人公の紺屋と、その部下半田は、別の依頼をそれぞれこなしていくわけだが、捜索中、それぞれが自分の捜査状況を報告し合わない」





ほう?





「上司は部下の仕事の進展状況を聴きたいだろうし、部下は上司の行動や予定が気になると思うのだが、その辺りを全く細かく報告し合わない」






ふむ。






「例えば、部下の半田は、上司である紺屋が探している失踪人の名前すら知らないし、上司の紺屋は部下に教えようともしない。また、上司の紺屋は、部下の半田がどのような手段で古文書を解読しようとしているかに対して全く興味がない。指示もしないし、訊こうともしない。半田からの経過報告も、たいへん上っ面な報告だけだ。調査所って、そういうものなの?」







ふむ・・・・。







「たった二人しかいない調査所で、上司と部下がそれぞれ何をやっているのかが分からないなんて、あり得ない話だと思う。コミュニケーションがとれていない変な状態がごく当たり前のように描かれていく」






ふうむ。






「コミュニケーションがとれていないことで物語は成立しているが、それがどうも当たり前に見えてこない。ちょっとでも情報を交換すれば、捜査の進展はものすごいものがあったはずだ」





ふむ。






「お互いの仕事の経過を話し合うシーンが一カ所でもあれば、それだけで物語が破綻してしまうというのはあまりにぎりぎりなラインではないかと思うのだが」






なるほどねえ・・・。






「一応前振りとしては、主人公は病気療養の間にあまり周りに関心を持つことが無くなったという振りがあるのだが、そんなものかなあとはなかなか納得しづらい」





ふむ。





「それに、純然たる推理ものではないけれども、物語に突っ込まれる余地があるというのはミステリーとしてどうかと思うんだけどね・・・」





なるほどねえ。

まあ、この作品はあまりそう行ったことは考えずに読む読み物であると思うけどね・・・。


で、どうかね。この作品はおすすめ出来る作品かね。






「極めて平易な文章で書かれているので、学生さんにもお勧めです。主婦の方、通勤されている方、ちょっとした暇つぶしにはなかなか良いと思います。本格的な推理ものを探しておられる方には向きませんが、軽い読み物を探しておられる方には良いと思います」






なるほどねえ・・・。

また何か面白い本を読んだら感想とか書きたまえ。


今回はこの辺りで終わる。