いらっしゃいませ。
・・・この湯のみですか?なんだかお土産にもらったんですけど・・。
せっかくですからこの湯のみで白湯でも煎れますか?
この湯のみ、熱いお湯を注ぐと、・・・あーら不思議。なんとこの美女が(中略)
どこで買ってきたんだろう?こんなの・・・。ああ、もらっただけなのに情けない・・・。
まあ、冷める前に飲んで下さいよ・・・。
彼は先日、急に学生時代に聴いていたバンドのCDを聴き直してみたくなり、魔窟と化したCDラックを物色し始めた。
彼が聴き直したかったバンドは、彼が大学時代に流行ったジャパ・メタのバンドで、仮に名前を『D』としよう。
『D』は関西インディーズシーンを席捲し、満を持してメジャーデビュー。インディーズ時代から個性的でテクがあるなと彼は思っていた。
そして、メジャーデビュー後のプロデューサーが、ちょっとニューウエーブ系の人であったので、バンドの技術と相まって、個性はさらに際立った。
ところがである。
彼が久しぶりに探し出して聴いた『D』の印象は違っていたらしい。
どんな印象だったのかね?
「聴きたかった曲を再生し始めてすぐ、こんなに下手くそだったっけ、と思ったね・・。確かにカッコイイんだけど」
ほう。学生時代に聴いた「上手い」という印象と違っていたわけだ。
「チョーキングのピッチはゆれる、ボーカルのハイ・ノートはなんだかフラット気味だし、ベースの刻みはよたるし・・・」
おやおや。
「で、当時の自分の耳の評価を疑ってしまった・・・」
当時上手いバンドたくさんいたけど、まあメジャーシーンでは、ずば抜けて上手いってほどじゃ無かったからね、このバンドは・・・。
もちろんインディーズではかなり上手いって評判だったけど。
「でも、色々考えたんだけど、逆にちゃんと演奏を録音したからそれがそのまま残っているのかな、と」
というと?
「現在の音楽業界は、演奏して録音てことがとんでもなく少なくなってるし、ちょっとミスしてもコンピューターでサックリ修正できるしね・・・」
digidesign社やsteinberg社のソフトを筆頭に、現在の録音のほとんどはコンピューターベースである。
限られたトラックをピンポンでやりくりして録音するのではなく、トラックは無制限。
上手なバンドマンやスタジオミュージシャンに演奏を頼むまでもなく、演奏自体打ち込み、ほんとに重要なソロだけ演奏をお願いすればいいし、ピッチのぶれまくるボーカルもピッチを変えるプラグインで見事な音程に。まあこれは極端な場合ではあるが・・・。
「究極、ボーカルさえ録れれば、なんだか立派なアルバムが出来てしまうわけだ。狙いでボーカロイド使うとかでなければ」
現代のテクノロジーはすごいことになってるからな・・・すごい音圧とぶれないピッチ。マスタリングでものすごいブラッシュ・アップされてくるし。
少々下手くその方がいじりがいがあって、かえってそこそこ聴き応えがあるものが出来るのかも知れないな・・・。
「やっぱりちゃんとドンカマ聞いて演奏して、アレンジしてってので作ってるから現在のCDを聴いた後に聴くと物足りなく聞こえてしまうのではないかと・・・」
まあ、それほど下手くそバンドでは無かったって事かな。まあバカ・テクでもなかったけど。
「個性的で良いバンドでした」
難しい時代だね、「上手い」と「下手」の境界が限りなく曖昧で。
「みなさんライブで勝負出来るようになれば良いのにね・・・」
ライブも平然と口パクやるだろうしね・・・騙され続けるしかないのかねえ・・・。
因みに件のバンド、今聴いてもめちゃくちゃカッコイイです!!!!!