読書感想文 拓未 司 『禁断のパンダ』を読んだ
いらっしゃいませ。
・・・ああ、見た目も大事ですからね。琉球ガラスのコップをお土産でもらったんですよ。澄んだ色合いがキレイでしょ。
・・・泡盛?
ダメですよアルコールのことなんか考えてたら・・・
水は1日に2L以上飲んだ方が良いってどっかで聞いたことがあるし・・・。
塩素だらけの水を2Lも飲みたくないと・・・?
そりゃごもっとも。
・・・どこかで人集めて洗剤とか売りつけてませんか?
彼は先日、『禁断のパンダ』という文庫を購入、読了した。どうしてこの本を買う気になった?
「2007年の『このミステリーがすごい!』の大賞に選ばれていたらしく、帯にそのことが大書されておったので、ちょっと宣伝に乗せられてやろうかと思って」
内容的にはどんな感じの本なんだね?
「・・・まあ、あらすじ的なモノは大手通販サイトさんの紹介文とかブックカバーの裏とかをごらんいただいて・・」
・・・結局は投げてしまうんだな・・・。
「・・・えーと、料理人の主人公の身近で殺人が起こり、主人公がなんとなく警察と絡んで、色々とあってエンディングを向かえるミステリー」
なんだそりゃ。まあネタバレを気にするとこんな感じか・・・。
じゃあ、それ以外で書ける範囲で感想とか書きなよ。
「『このミス』2007年大賞の割にはミステリーとしては読み応え無し。2007年て、そんなにミステリー不作の年だったのか?それとも宝島社の何らかの意志で・・・」
初っぱなから辛口だな!
「まあ『このミス』大賞って帯見て買ってるんで、ミステリーとしてかなりなものを期待しちゃうからね・・・」
『すごい』ではなく『普通』であったと・・・。
ミステリーに対してコメントを続けるとなんだかいずれネタバレ的な事を書いてしまいそうだな。それ以外の感想を書きなさいよ。
「まず、作者の拓未司氏が、元々フレンチの料理人出身というのが異色!」
しかも神戸の店で働いていた経歴もあるらしいな。その経歴が生かされてこの『禁断のパンダ』も舞台は地元・神戸、主人公はフレンチの料理人だ。
「まず実際に作者が神戸で働いていたことがあるので、神戸の街の描写が細かい。舞台となる港のレストランも、実在はしないがモデルはあそこかな、なんて地元民は考えてしまう」
さすがは料理人出身の作家、料理の描写がどれも本当においしそうだったな。
「そのあたりはかなり!途中三宮あたりのビストロの行きたくなった!」
なるほど。料理の描写は良かったと。
「特にフランス料理に関してはかなりなリアリティで迫ってくるので、そのあたりを期待して読むならありかな」
それ以外は?
「またダメになっちゃうけど・・」
いいんじゃないか?
「登場人物に青山って刑事が出てくるんだけど、この男の性格設定とかキャラとかがむちゃくちゃ!」
おお、飛ばすなあ・・
「こんな警官が実際にいたとして、こんなやつに職質とかされたら確実に出るところに出て訴えるね!」
まだ行くか・・・
「ちょっと『彼ははみ出しキャラ』的な感じで書いてるんだろうけど、その性格設定ですべてが台無し!このキャラが中心でなかったらもっと物語り全体の評価も上がるはず!」
そんなにいけてなかったか・・・
「あと、警察組織的なものをいくら何でも無視しすぎ!そこのリアリティがない(リアルではなく)。まだ2時間サスペンスの刑事物の方がリアリティがある(何度も言うがリアルではない)」
・・・とりあえず総体的に見て・・・
「まあ、経歴から鑑みてそれほど執筆量が多くないっぽい事を差し引いても・・・65点。続編にも青山刑事が出てきているんなら続編は買わないかな」
・・・辛いなあ!
「惜しいんだよ、とにかく。編集者は執筆段階できっとダメを出せたはず。『このミス』も他の大賞に見合った作品を選出できたはず」
煮詰めるべき部分が煮詰まっていなかったわけだ。
「次に機会にはまたおすすめできるものを紹介できればいいなと」
そう願いたいね・・。ダメだらけってのもどうかって感じだしね。
しかしキミは今回本当にえらそうだったなあ・・・・