Cafe Ligia-exotica / 純喫茶 船虫

よしなしごとを。読書とか映画とか観劇と港の街の話しとか

読書感想文 『人形式モナリザ Shape of Things Human』 森博嗣 を読んだ

 いらっしゃいませ。


 ・・・美味しそうに飲んだら、どこかでCMのディレクターが見ていて、『あなた、コマーシャルに出てみませんか?』なんて話が舞い込むかもですよ!

ささっ、ぐっと、ぐっと・・!





 彼は過日、森博嗣氏の小説、『人形式モナリザ』を読了したらしい。今回はそれについての感想とかをすこーしばかり書いてみたいそうだ。







Vシリーズ、2作目だな。どうかね、既読のS&Mシリーズと比べてみて。





「まあ、比べるのもアレな話なんだけど、S&Mシリーズは主人公が天才的なのに対し、Vシリーズはもっと庶民派の感じだね。確かに主人公の瀬在丸紅子はかなり天才的発想の持ち主に描かれているんだけれど、その他の登場人物がもっと庶民派なので」






ほう。





「ただ、もう一人の主人公らしき人物、保呂草潤平はなかなかに謎めいた人物に描かれている。瀬在丸紅子は天才的であるが謎がない。保呂草潤平は庶民的ではあるが謎めいている」





ふむ。

両方ともミステリーではあるのだな。






「ミステリーではありますが、森作品なので、読者に推理させて、さあ犯人を見つけましょう、という感じではないけどね」






なるほど。

では、恒例ではあるが、内容をちょっと紹介してみるかね。もちろんこれも恒例であるが、ネタバレ注意報発令ということで。






「おんぼろアパート“阿漕荘”に住む、自称私立探偵の保呂草潤平(ほろくさ じゅんぺい)、大学生の小鳥遊練無(たかなし ねりな)、同じく大学生の香具山紫子(かぐやま むらさきこ)、さらに近所に住む没落した名家のお嬢様、瀬在丸紅子(せざいまる べにこ)は、なぜだか仲の良い麻雀仲間である。

 大学が夏休みに入った練無は、学校の仲間と蓼科のペンションに住み込みアルバイトとして働くことになった。その話を聞いた保呂草・紫子・紅子は、無料で高原のペンションに泊まれると踏んで、練無を頼ってペンションの世話になることに。

 しかし、彼らが泊まったペンション近くの美術館では絵画の盗難が発生、更に見学に向かった人形博物館では殺人事件が起こる。

 殺人事件の犯人はいったい?また、盗まれた絵画は殺人事件に関係しているのか?天才美術家が残したといわれる遺作、『モナリザ』とは・・・。阿漕荘の3人と紅子はそれぞれに事件に関わっていく。果たして事件は解決するか・・・」






ほう。
意外にも簡潔にまとめてきたな。






「細かい部分では入り組んでいますが、大まかなストーリーは意外にも簡潔。それに変な意味で殺人事件はそれほど重要なファクターではないし」






・・・ほう。

そんなこと書いてしまって良いのかね。





「ネタバレ注意報ということで・・・」






ふむ。






「この小説の特徴としては、探偵役が決して一人ではないと言うこと」





ほう。





「確かに最終的には主人公である瀬在丸紅子が事件を解決(もしくは事件を総括)するんだけど、保呂草は探偵らしく(?)行動するし、大学生である練無も紫子もそれぞれが事件の情報を得、思い思いに行動する。そして、例えば一日の終わりにそれぞれがその日に起こったことや知り得た情報を披露し合って、それぞれが思索をめぐらすという感じになっている」





ふむ。





「なので、決して探偵は一人ではないし、名探偵一人とワトソンが三人という構図でもない。かといって、全て合議制のような形で推理が進むのではなく、各人が各人とも別々な行動をとり、好き勝手な意見を言っていたりする。そのバラバラな意見の集合が、物語のラスト付近で一つになっていく感じ」






ほう。






「S&Mシリーズでは、天才的な主人公・犀川創平の推理で事件が解決するが、Vシリーズでは、あーだこーだ言う探偵役が複数存在する。S&Mシリーズの西ノ園萌絵が複数いるような状態、かな」






・・・ふむ。






「前回読んだVシリーズの第1作目、『黒猫の三角』もそうであったけど、本来最も重要事項であるはずの殺人事件というものよりも、さらに別などんでん返しが用意してあって、そのどんでん返しに『!』と思わされてしまうような作りになっている。前作といい今作といい、まさかそこをひっくり返されるとはという、作り方になっている。その辺りの構成はなかなかに面白い」






ふむ。






「登場人物達もそれぞれ魅力的。ただ、S&Mシリーズの主人公の二人のような、圧倒的な感じ(?)は無い。瀬在丸紅子の発想力もすばらしいけど、それは圧倒的な感じではない。なぜだか親しみを持てる距離を持った主人公であると思う」






なるほど。






「S&Mシリーズの、まるで迷路のような文章に違和感を覚えてしまったり疲れてしまったりする方も、Vシリーズならばすんなり読むことが出来ると思いますよ」






なるほどねえ・・。

どうかね、この作品はお勧めかね。






「この一冊だけでは登場人物のバックボーンが(特に保呂草が)見えてこないので、今作を読むなら是非第1巻の『黒猫の三角』を読んでみることをお勧めします。この本単体でも楽しめますが、人間関係などがより理解しやすいのではないかと思います。内容的にはそれほど難しいものではないと思うので、学生さんの通学時に、お父さんの通勤時に、それぞれ暇つぶしにはなるのではないでしょうか(少々哲学的な内容も含まれますが)」






なるほど。

まあ、シリーズ物ということで、この先も読んでいくことになるのだろうな。


また読み終わったら感想とかを書くのだぞ。


今回はこんな感じで終わる。