Cafe Ligia-exotica / 純喫茶 船虫

よしなしごとを。読書とか映画とか観劇と港の街の話しとか

ほんの少しの思い入れとか 古本とかなんとかかんとか

 いらっしゃいませ。


 いやあ、カウベルの音、慣れてきましたよ!慣れるとなかなかいいもんですね。雰囲気があります。


・・・これがもしファミマの音だったら・・・


・・・あ、ああ、ちょっと色々と想像を巡らせてしまいました・・・。ちょっと寒気が・・・。


それではグラスはこちら。蛇口はこっちです。




 彼は前回極めてとりとめのない文章で終わっているものの続きっぽいものを書くつもりらしい。




「厳密に言えば続きではないんですがね・・・」




 前回はなんだか時々行く古本屋では、売り場担当の方のお薦めなんかはあまり期待できなさそうだ的な感じで終わっているが。




「・・・以前は読み終わった本を売りに行っていたんだよ、その古本屋に。正確に言うとリサイクル品なんかも扱っている店なんだけどね」




ふむ。




「例えば新刊で出たばかりで話題沸騰の文庫本と、随分前に刊行された文庫本をまとめて持って行ったとしよう」




ふむ。




「なんだか新刊の方が高く買い取られそうな感じだが、刊行時期の新旧問わず一律50円で引き取られていく」




どれだけ話題作でも?




「どれだけの話題作であろうが、誰が書こうが、レアであろうが無かろうが、文庫は一律50円」




なんだか新刊を売りに出したという実感がないな・・・。





「そこから値引きされるかどうかは、本の汚れ具合による。ちょいと汚れていればそれこそ新刊であろうが何であろうが容赦なく10円とか20円とかにされてしまう」




ほほう・・。




「以前持って行った本は、側面にちょっとしたシミが付いていた。表紙などはカバーを付けて読んでいたので状態は良好であった。・・側面のシミは、読んでいたときには気づかなかったんだけど、どうやらカバンに入れている間にペットボトルの水滴が付いてシミ状になっていたようだ。店員さんは『これは引き取れません。値段をつけることが出来ないので持ち帰りますか?』と言ってきた。引き取ってくれというとタダで引き取られていった・・」




ふむ。まあ汚れていたのなら仕方が無いのではないか?





「お願いして処分してもらうってのなら納得できるが・・・。彼らはその若干汚れた側面を特性の紙やすりのようなもので削り落としそのまま商品としてお店に陳列してしまう。無料で引き取ったものがあっという間に200円とかの値札をつけて本棚に並ぶのだ」





引き取れないと言っていたものが原価ゼロで商品になるのか・・・。ちょっと理不尽な気がするな・・・。




「まあ、最近は売ることも少なくなったが、少々納得いかなかったので・・・。そもそも話の大筋はこれではなく、この後が問題なんだ」



ふむ。



「買い取られた書籍は状態が良ければ基本的にそのまますぐに値札を付けられ店頭に並ぶ。新旧も有名無名も問わずごった煮状態で作家別に並べられていく」




ふむふむ。




「例えばその段階で売れそうな本であるとか、プッシュしていきたい本だとかを、せめて面陳列にするだとかすればまだ許せるが、基本的に作家別に分けられたところにぶち込んで行くのみ。まあ、ナンバリングのあるシリーズとかはさすがに順番に並べているようだが」




むう。つまり・・




「つまり、ここの店員さんの仕事は『本を売る』ことではなくて、『仕入れた本を並べる』のが仕事なワケだ・・・」



ほお。



「基本的に入ってきた書籍を作家別に並べるだけなので、本に関する知識などはいらない。強いていうなら有名作家の名前くらい覚えておけよくらいなものだ」




ふむ。




「本の知識は必要ないから、当然新旧の区別もないだろうし、作家に対する思い入れもないだろうし、好きな小説が売れてほしいと言ったことも考えないだろう」



うむ。



「残念ながら、こちらはそのようなごった煮の中から面白そうなものを探し出す能力は持ち合わせていないので・・・」




で、古本屋では本を買いにくいと・・・。




「・・・個人的に、売る側は商品に思い入れをもって売らないと、と思ってしまう」



なるほど・・・。まあ確かに単に並んでいるだけよりはちょっとでも目をひくように面陳列されていた方がアピール度は高いよな・・・。




「きっとその本に感性が合うという人がどこかにいるに違いない。その誰かにアピールするんだ・・・・」




みんなきっとあるはずなんだよ、誰かに読んでもらいたいっていう本が・・・。




「そういえば、森見登美彦氏の小説『夜は短し歩けよ乙女』に、古本市の神様ってのが出てきてて」



ふむ。



「それに関する女性主人公の語りを引用してみよう」



(前略)



 私はただ静かに歩んでいきました。

 これからはきちんと古本市の神様にお祈りをいたしましょう。そして読まなくなった本はできるだけ世に解き放ち、次なる人の手に届けましょう。本たちが真に生きるように、私は努力いたします。ですから神様お願いします。私は手のひらをあわせて「なむなむ」とお祈りしました。



(後略)



夜は短し歩けよ乙女』 「第二章 深海魚たち」 より抜粋



 むう!古本・イズ・ビューティフルな感じであるな!



「必要としている次なる人の手に届くと良いな・・。ちょっとしたお薦めポップがあるだけで全然回っていくと思うけどね・・・」




・・・いずれは探しやすくなるかね?その店は。




「さあ?企業の販売のシステムだし。みんなマニュアルでそうすることを決められてるわけだし。無理なんじゃねえの」




む、投げっぱなしか!



「・・・売り場の担当の方が、時々、本当に時々、本を読む・・。小説を。ジャンルなんかなんだって良い・・。それだけでも本に対する思い入れとかが変わっていくと思うよ・・。別に熱心な販売担当者になれとか、読書家になれとか、活字ジャンキーでないと務まらないとかでなくてね・・・。本当にちょっと読むだけで良いと思う・・・」



・・・まあ、若干説教臭いというかなんだか偉そうな記事であったが・・。皆さんの本棚の肥やしもきっと次の読者が待ってます。世に解き放てば本たちが真に生きる・・かも知れません。



「『ライトユーザー』に優しい売り場をお願いします。リサイクル店の本売り場担当の方々・・・」