Cafe Ligia-exotica / 純喫茶 船虫

よしなしごとを。読書とか映画とか観劇と港の街の話しとか

読書感想文 『グラーグ57』 トム・ロブ・スミス を読んだ

 いらっしゃいませ。


 暑さが続いてますね。どうですか?水のありがたみがましてますでしょ?




 彼は過日、トム・ロブ・スミスの小説、『グラーグ57』(上・下)を読了したらしい。今回はそれについての感想とかを書いてみたいそうだ。






以前に読んだ同じ著者の『チャイルド44』の続編という形になっているようだな。キミは前作をかなり高評価していたようだが。




「うーん、今作に関しては、前作のように手放しで褒めることは出来ない感じかな・・・」




おっと、のっけから辛口だな。これから読まれる方もいるというのに。




「例によって、ネタバレ注意となりますので、読まれる方はご注意くださいってことで」




では、例によって内容とかに触れてみるかね。





「レオ・デミトフは3年前の秘密警察時代に少年少女を44人殺害するという連続殺人を何とか解決し、その功績を認められて、民警内に殺人事件を専門に取り扱う、あまり政治的なことに縛られない部署を立ち上げ、その部門の責任者として活動していた。三年前の事件に巻き込まれ、職を失っていた妻は再び教職に戻り、出世欲の強い部下に両親を殺された幼い姉妹を養女として引き取り、4人家族として生活していた。しかしながら、姉妹の姉、ゾーヤはレオを義父としては認めず、実の両親を殺した秘密警察の一派であるとしか見てくれず、家族の関係はぎくしゃくしたままであった。

 スターリン政権からフルシチョフ政権へ時代が大きく移り変わっている最中のソビエト連邦フルシチョフスターリン時代の行き過ぎた粛正は国の誤りであるという発表を公式に行った。この公式文書が市中に出回り、スターリン政権下で暗躍していた密告者や秘密警察などが次々に殺害されていく事件が発生する。この連続殺人を捜査するレオであったが、レオとて秘密警察の出身であって、事件は対岸の火事ではなく、やがてレオ自身や家族に火の粉が降りかかっていくことになる・・。
 過去にレオにより強制収容所送りになった者が事件に深く関わっていたのだ・・・。」





ずいぶんと内容に触れているようだが。




「少し話が込み入っているので、削るべき部分が少なかった・・」





なるほど。
では、感想なんかを書いてみたまえよ。




「前作が、実際にあった連続殺人を下敷きにしつつ、スターリン政権下の共産主義の矛盾と圧政を浮き彫りにするという社会派サスペンスであったが、今作ではその重厚さが薄まった感じがする」




ほう。




「確かにフルチショフの改革路線における軋轢や、地方の貧困、そしてハンガリーの動乱など、当時の社会情勢を今作も多く盛り込んでいるのだが、前作の一本筋の通った感じではなく、いろいろな要素をつなぎ合わせて一つの物語を構成しているというか、どうもばらばらした感が否めない」





ふむ。





「物語の根底には、主人公レオが旧政権時代に秘密警察として逮捕した者の復習という物があるが、どうもそれだけで物語が成立し切れていない感じで、統一性のないモザイクといった感じで一つのイベントが終わるたびに物語がぶち切れてしまう」





ほう。




「あと、個人的には敵役がどうも魅力が薄い」




というと?





「具体的にどうというわけではないけど、どうも感情移入しにくい」





ふむ。





「あと、ものすごく死にキャラがわかりやすかった。お約束過ぎ」





なるほど。

で、どうかね。全体としておもしろかったのかね。





「まあ、サスペンスとしてはおもしろいと思いますよ。細かいぶつ切れのピンチが主人公のレオを次々と襲います。ただ、どうもそれだけで終わっている感じで、前作のような全編通してのドキドキはありません」




ほう。





「やはり政治的・歴史的背景が物語の根幹にあった前作に比べると今作はその辺りが弱い気がする。今作は政治の大きな流れを示唆しつつも、基本的に主人公レオに降りかかる災難で物語が構成されている。どうもその辺りがドキドキの弱さを生んでいるような気がする」





なるほど。

で、どうかね。この作品はおすすめできる物かね。






「前作を読んでいる人ならお勧めできます。このシリーズは三部作らしく、第3部に続く内容なので、三部目も読むぜという方は読む必要があるでしょう。ただ、前作だけでも十分に完結しており、前作ほどのおもしろさもないので、気乗りのしない方は読む必要はないかも知れません。」




なるほど。

辛口であるな。




まあ、また何かおすすめできる作品があれば紹介するのだぞ。