Cafe Ligia-exotica / 純喫茶 船虫

よしなしごとを。読書とか映画とか観劇と港の街の話しとか

読書感想文 『かのこちゃんとマドレーヌ夫人』 万城目 学(まきめ まなぶ) を読んだ

 いらっしゃいませ。


 ヨーロッパでは、大寒波が来ているらしいですね。日本にも影響が及ぶとか及ばないとか・・・。

淀川の取水地が寒波で被害を受けないことを祈るばかりです・・・。




 彼は過日、万城目学氏の小説、『かのこちゃんとマドレーヌ夫人』を読了したらしい。今回はそれについての感想なんかをずけずけと書いてみたいらしい。

短い作品であったようだが、どうであったか。





「うーん、どこへ行きたいのか万城目学・・・」






おや、あまり感心出来なかったような感じだな・・・。




「以前に読んだ、『プリンセス・トヨトミ』が、大作の割にはイマイチであったので、次どうするのかなあって思ってたんだけど、小品、しかもかなり童話チックなファンタジーになるとは・・・」




ほう・・・。

感想などのまえに、例によって内容に触れてみるかね。もちろんネタバレ注意報発令ということで。





「かのこちゃんは、この春に小学生に上がったばかりの女の子。おとうさん、おかあさん、それに老犬の“玄三郎”と一緒に暮らしている。

 かのこちゃんがまだ小学校へ上がるまえ、突然の夕立の時に、なぜか雨に打たれながらも自分の小屋の前で座り込んでいる玄三郎を目にする。なぜ小屋に入らないのだろう?雨が小降りになってから小屋を覗くと、一匹のアカトラの猫が小屋の中に座り込んでいた。玄三郎は、その猫を追い出すこともなく、夕立の間、雨に打たれていたのだ。

 その日から、その猫はかのこちゃんの家に住み着いた。犬の玄三郎とは全くけんかをしない。まるで夫婦のように寄り添っている。

 かのこちゃんは、その猫にの赤茶色の色から、“マドレーヌ”と名付けて新しい家族として迎えた。毎日空き地で“猫の集会”に出るマドレーヌ。

 そして、かのこちゃんは家族と共に時間を過ごし、小学校入学を迎える・・・」




・・・もう少し内容紹介らしい文章にならないのかね。





「短いお話なので、ちょっと行きすぎると、すぐ大きなネタに触れてしまう・・・。この程度が限界です・・・」




相変わらず文章をまとめる能力が貧弱であるな。

まあ、いい・・・。


万城目作品と言えば、特定の“舞台”(場所)と言うのが定番であったような気がするのだが。





「『鴨川ホルモー』は京都、『鹿男あをによし』は奈良、『プリンセス・トヨトミ』は大阪であったね。しかしながら今作は、これはどこであるという場所の特定はない。どこかの町、どこにでもいる小学校一年生が主人公・・」





ほう。






「今作のような小品では、舞台を特定しないのかもね。もっと長編ならするかも・・。例えば滋賀とか兵庫とか・・・」





ふむ・・・。






「今作は、文章量的にも短くて、内容もエンタメというより、ファンタジックな童話といった感じであるのだが、個人的にはあまりにも童話すぎて・・・。対象年齢を下げているのか、なんだか中学生辺りのために書いているというか、どうも物足りない」





ふむ。





「(比較対象としてちょっと無理があるかも知れないが)例えば、重松清氏の小学生向けの小説『くちぶえ番長』は、小学校四年生が対象とは思えない質であったと思う。もしかしたら書き方の違いによる物かも知れないが・・・。『くちぶえ番長』の語りは、大人になった語りが小学校四年生当時を思い出すという形で書いてあった。それに対して今回読んだ『かのこちゃんとマドレーヌ夫人』は、語りが完全に三人称で、それ自体の表現が少々幼く感じる文章であるためにどうも頼りなく感じるのかも知れない・・」





・・・・ふむ。






「表現の幼さとかはとりあえず置いておいて・・・、本来キラキラすべき文章表現がなぜだかキラキラしていない」





ほう。





「物語的には、小学生の女の子が、出会いと別れ、さらに(ネタバレしますが)愛犬の死をもって人間として少し成長するという物語なんだけど、本来小学生の感受性の強い時期であると思われる時期なのになぜか文章がキラキラではなく、単にまどろっこしいとしか感じられない」






・・・ふむ。






「猫たちからの目線なんかも、どうも人間的でいまいちキラキラが少ない」






ほう。





「大変個人的な好みの問題ではあるが、これを森見登美彦氏がアレンジとかしたら、きっとキラキラで、もっと不思議で、それでいて身近な物語になったのではないかと、ふと思ったりして」






それはどうかと思うが。






「『有頂天家族』的な・・・。動物物だし・・・」






どこかの街の物語として書かれている『ペンギン・ハイウェイ』はキミ的にはイマイチであったのではないかね。





「ふうむ。それはさておき、万城目氏はデビュー作の『鴨川ホルモー』が奇跡的に面白くて、それ以降はなんだか下り坂をだらだらと下っていっている気がするのだが・・・」






しかし、『鹿男あをによし』はドラマ化されたし、『プリンセス・トヨトミ』は映画化されるそうじゃないか。







「・・・まあ、たしかに、この『かのこちゃんとマドレーヌ夫人』も、ジブリ辺りがアニメ化すればうけるかもだけどね・・・。でも、残念ながら、アニメの原作になり得る、というだけで、小説としてはそれ以上じゃないねえ・・・」





厳しいな。





「なぜだろう?“感受性豊かな表現”のはずが、単にまどろっこしいとしか感じないこの感じ・・・」






ふむ・・。







「あとネタ的に、あまりにも“小品”すぎたかも知れない。もっと物語にアイディアを盛り込んでも良かったかも知れないね・・・。あと、少女目線の物語と、(ネタバレになるけど)猫目線の物語で時系列を前後させていく手法がどうもはまっていないように感じた」






なるほどねえ・・・。

で、どうかね。この本はお勧め出来る本かね。







「なんだか童話チックなファンタジーを読んでみたい方には良いかも知れません。小品ですので、ボリュームはありません。短い作品をお探しの方には良いかも知れません。小学生の成長物語なので、小学校低学年のお子さんをお持ちのお母さんが、お子さんの寝物語に読み聞かせるにも良いかも知れません。小学校高学年から中学校までの方で、読書感想文用に短い作品をお探しなら読んでみても良いかも知れません」





なるほど。






「まとめると、ファンタジーなのにキラキラが足りない。少女の成長物語なのにキラキラが足りない。童話的なのにキラキラが足りない。物語にボリュームが足りない。キャラクターに魅力が足りない。そんな感じかな」






・・・・酷評だな。






「あくまで個人的意見ですので。このボリュームの無さが逆に好みだという方もきっといると思いますよ・・・。まあ、問題はボリュームより内容の薄さであるんだけどね・・・」






あくまで辛口だな・・・。






「この作者は『鴨川ホルモー』を書けた人なので、ちゃんとすれば面白い物が書ける人だと思います。ぜひ次、氏の作品に出会ったときには、面白いな、これっていうものと出会いたいと思います」






まあ、あまりこの記事は辛口ではないから、たまにはこういった辛口記事もアリかも知れないな・・・。
また、何か面白い作品を読んだら感想とかを書くのだぞ。



今回は辛口のまま終わる。