Cafe Ligia-exotica / 純喫茶 船虫

よしなしごとを。読書とか映画とか観劇と港の街の話しとか

読書感想文 『私の男』 桜庭一樹 を読んだ

 いらっしゃいませ。

 『11月11日は、ポッキーの日であるんだけど、あずにゃんの誕生日でもあるんだよ!!』

・・・え?なんか強調して叫べっていわれたんですけど・・・。意味はよく分からないんですが・・・。そもそも今日は11月11日なんですか?


・・・ところで、“あずにゃん”て誰ですか?アイドルとかですか?





 過日彼は、桜庭一樹氏の小説、『私の男』を読了したらしい。今回はそれについての感想とかをちまちまと書いていきたいそうだ。







「いやあ、今回はなかなか読むのに時間がかかりました・・・」






長い小説であったのかね。






「そう長くはないんだけれど、みっちりと濃いというか、流れないというか・・・。とにかくなかなか物語が脳内でテンポ良く進んでくれなかった」





ほう。
感想とかの前に、先に内容にちょっと触れておくかね。あ、もちろんネタバレ注意報発令ということで。





「腐野淳悟(くさりの じゅんご)は、15年前の25歳の時に、10歳の少女、花(はな)を養女として引き取る。花は淳悟の遠縁にあたるが、天災で家族を全て失っていた。

 この物語は、養女である腐野花が、結婚式を明日に控えた2008年の6月・梅雨の時期から、二人の出会いの時期の1993年7月まで遡っていくことによって構成されている。


 愛に飢えた二人が、義父と養女の関係を越えた愛情と性愛の繋がりをもって生きていく様を描いている・・・」






・・・なんだか漠然とした内容紹介であるな。






「どうやら読み終わってもまだ今ひとつ“物語”を消化し切れていないような感じがします・・」






ふむ・・・。





「物語を端的に表現すると、これは『愛と絆の物語』、ということになるのかも知れないけど、そうさっくりと言えないような気もする」






ほう。






「個人的に、“愛と絆の物語”というと、東野圭吾氏の『白夜行』なんだけど、本作もほのかにその匂いを感じる。主人公的存在の淳悟の主観的な感覚の排除のされ方と言い・・・」





ふむ・・・。






「ただ、『白夜行』で感じる“絆”よりも、文章表現の違いだろうか、それともテーマの書き方の違いだろうか、もっとぬるりとした感じがする。個人的には『白夜行』の乾いた感覚のほうが取っつきやすい」







ほう。






「共感が持ちやすいというか・・・。『私の男』はなかなかちょっと持ちにくいかな?」






ふむ。






「主人公の二人の、お互いを求め合う強い感情は、男女の愛情のようにも見えるけどそれだけでもないし、家族の(血の)つながりというだけのものでもない」






・・ふむ。





「それぞれのトラウマ的な物ががっちりとかみ合ってしまったが上に生まれた奇妙な愛と絆の物語・・・」





ふうむ。





「今回読んでいて、なかなか情景や人物がイメージとして浮かばなかった・・・。これが読書の進行を遅くした要因でもある」





ほう。





「個人的に脳内で物語がビジュアル化されているような感覚で小説を読むことが多いんだけど、いつまでたっても明確なイメージが脳内に出てこなくて」






ふむ。





「特に、主人公の花のイメージが出来上がらなかった。・・・最初おぼろげにイメージが出来上がるんだけど、次の章ではそのイメージの3年前のイメージ、その次の章では更に3年前、最終的には物語のスタートから15年前の小学校4年生の花が登場する。最初に出来上がったイメージから、過去の少女のイメージへ・・・。これが上手くイメージ出来ない」







ふむ。






「最初に出来上がってしまった、“ちょっと目立たない、青白い顔をした20代半ばの女性”の、高校生時代や小学生時代が、ビジュアル的に繋がってくれない感じ」







なるほど・・・。





「これは義父の淳悟も同じで、退廃的な崩れた感じで脳内にイメージされると、そのあとの若い頃の印象とは別物の感じがして、これまた繋がってくれない・・・」





・・・ふむ。






「まあ、これは読み方の問題なのであって、普通に読まれる方は、恐らく全くもって普通に物語を受け入れることが出来ると思います」







なるほど。







「ただ、淳悟の(脳内)イメージで、声だけは最初から最後まで繋がっていて」






声、の、イメージ?






「淳悟が登場してしゃべり始めたら、脳内では山寺宏一氏の声で話し始めた。この声のまま最後まで読み終えた感じ」






ふむ。






「お陰で、物語の冒頭、淳悟のイメージ映像が、脳内ではかなり『カウボーイ・ビバップ』なビジュアルに。ちゃんと“肩まで伸びた髪”という記述があるにもかかわらず、脳内イメージではモジャモジャヘアーになっていた・・・」





なんだそりゃ。







「ただ、これも映像のイメージが上手く物語を遡ることが出来ず、途中からぼんやりとしたイメージになってしまう・・。困ったものだ・・」






ふむ・・・・。







「・・この物語は、主人公・花の結婚式から、各章ごとに時間軸が戻っていく。これは大変に面白かった」






ほう。





「“今ある現実”が、過去にどのようにして形成されていったか・・・。徐々に主人公二人と周囲の人間達の繋がりが明かされていく・・・。ちょっとその過程もミステリーっぽい。もちろんこの小説はミステリーに分類される類のものではないが」






ふむ。







「最初は梅雨の東京のじめじめした空気にとらわれ、そして冬の東京拘置所の近くの乾いた寒さにとらわれ、そして冬の紋別の海の粘着質な寒さにとらわれ・・・。物語のその独特な圧迫感も読むスピードが上がらなかった原因かも知れない」






ほう。






「その風景も、二人の行動も、圧迫され、押し殺し、社会の底辺近くでじりじりと生きていっているにもかかわらず、なぜか高い位置から社会を見下ろしている感覚。それは諦めからきた達観的なものではなく、“私たち親子はこれほどまでに深く愛し合っているけど、あなたたちはどう?”と、自らの運命や人生観を、むしろ進んで受け入れている感じというか・・・」






ふむ・・・。







「ただ、上記したが、二人の繋がりは、単にインモラルな(←使い方合ってますか?)愛情というだけのものではなく、それぞれのトラウマ的な傷を埋め合っている上で成り立っている、もっと奇妙な(?)愛情の形」







ふむ。





「その関係は、娘・花の結婚によって一応の終焉を見る。読む人によっては、この用意された終わり方が気にくわない(?)とか、未来永劫その形の生き方しかない、というほうが好みの方がおられるかも知れないが、個人的にはこの用意されたエンディングは有った方が良いと思う。救われたのかどうかははっきりとは言い切れないけれど、一人の男に心を囚われていた花には、ある意味開放された(開放を余儀なくされた?)、一種の救いのような気がしてくるから」






なるほどねえ・・。







「ちょっと読む人を選ぶし、エロい内容なんで学生さん達には向きませんが、なかなかに読み応えのある作品ではないかと思います」






なるほど。
どうかね、この作品はお勧め出来る作品かね。





「上記しましたが、読む人を選ぶし、学生さんが読書感想文を書いたりするのには向かないと思いますが、男女の繋がりであるとか愛情であるとかの一つの形であると思うので、そういった物語に興味のある方は読んでみると良いのではと思います」






なるほど・・・。

ある意味感想を書きにくい作品であったようだな。

まあ、また何か面白い作品を読んだら感想でも書きなさいよ・・。


今回はこの辺りで終わる。